科学コミュニケーション論における欠如モデル、文脈モデルとは?

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どうも、木村(@kimu3_slime)です。

突然ですが、原子力発電についての知識が増えれば、人は原子力発電を安全だと思うようになるのでしょうか?

原子力発電に反対する人は、原子力発電について無知だから反対するのでしょうか?

今回は、こうした問いを「科学コミュニケーション論」において登場する「欠如モデル」、「文脈モデル」という概念を使って考えていきたいと思います。

 

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一般的な人には科学的知識が欠けている? 欠如モデル

欠如モデル(deficit model)とは、「原子力発電など論争の対象になっている問題に対して、人々が否定的な態度を示すのは、一般の人々に理解や知識がないせいである」とする仮定のこと

 

そもそも、欠如モデルという概念は、政府が科学の公衆理解を測定するために実施した調査に含まれている暗黙の前提を説明するために生まれました。

例えば、科学技術政策研究所が2001年に行った「科学技術に関する意識調査」では、次のような質問項目が使われています。

スクリーンショット 2016-07-08 午後7.57.08

画像引用:科学技術に関する意識調査 – 2001年 2~3月調査 –

このような質問では、一般の人々は知識が不足(欠如)していて、科学者には知識が十分あるということになります。

科学者の側には答えが一つに決まるような正しい知識がある」としていて、「その正しい知識を持っている人は、〇〇%に過ぎない」ということを伝える結果になっています。

「このように、理解度が低いから人々は非合理的な恐れを抱く。知識があれば恐れを抱かなくなるから、一般の人に理解を進めよう」ということになります。こうした欠如モデルという前提は、多くの同様の調査に見られるそうです。

 

つまり、こうした調査には次の3つの前提があるわけです。

  1. 科学とは、答えがただ一つに決まる正しい知識からできている。
  2. 一般の人々には、1.で言うような知識が欠けていて、科学者の側にはそれが足りている。
  3. 知識が欠けている状態を測定することができる

 

でも、この前提はおかしいと指摘した研究者が、この前提を「欠如モデル」と呼ぶようになったのです。

 

状況によって理解の深さは違う、文脈モデル

科学の公衆理解を研究したウィン(Wynne)は、知識が不足していると言っても、もっと多様な状況があると指摘しています。そうして提唱されるのが、文脈モデルです。

 

例えば、次のような状況では、科学者よりも一般の人の方が正確な知識を持っていることがあります。

家族性高コレステロール症などの難病を持つ人は、自分たちの状況についての知識を持っています。

その知識は、科学的知識として正式には認められていないかもしれませんが、特殊な状況では、医者が持っている一般的な知識よりも正しいでしょう

このように、「一般の人々は、状況(文脈)に即した知識を持っている」と考えるのが文脈モデルです。

 

ローカルナレッジ、素人の専門性モデル

文脈モデルの話をするときに、文化人類学者のギアツ(Geertz)が提唱した「ローカルナレッジ(local knowledge)」という概念を知っておくとより理解しやすいです。

ローカルナレッジは、直訳すると局所的な知識であり、土着の知(indigenous knowledge)とも呼ばれます。

一般的な理論ではなく、局所的であることを避けることができない、現場の状況から分けて考えられない知識のことです。

ある薬草がある病気に役たつということが地域で知られているというような状況は、ローカルナレッジの例ですね。

科学的な知識を持たず素人とされている人々が、このように知識を持っていることを、欠如モデルと対比して、素人の専門性(lay-expertise)モデルと言われます。

 

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文脈の数だけ、学ぶことがある

これらのモデルは、学校の勉強ができるからといって、大学を出て専門家としての知識を持っているからといって、いつでも「教える側」になるわけではないことを教えてくれます。

科学について色々な知識を教えても、それを好きになるわけではない。嫌いになる人は、知識以前の問題で、何らかの文脈で嫌いになっている可能性があります。その文脈を分かち合えるよう、努力していきたいものです。

この話の「科学」の部分を、オタク的な趣味や、政治といったマニアックなものに置き換えても使える考え方ですね。

何かに詳しいつもりでいても、自分の知識、経験には限界があります。個人のものの見方には、自分だけのメガネ、制限がかかっています。だからこそ、他人が持っている文脈に学び続けたいですね。

 

科学コミュニケーション論
東京大学出版会
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この本は、文脈ゼミで読みました。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

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