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専門的な知識はコミュニケーションをさまたげるのか?

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

その知識の専門化が進めば進むほどに、分断の溝が大きくなっていくように感じます。

これはなぜなのでしょうか?

 

専門知識を持つと、いい加減に話すことができなくなる

まずは、専門知識を身につけることで、コミュニケーションがしにくくなるような状況の具体例を紹介します。

大学で数学を学んだ人は、厳密でない数学の使い方を否定するようになります。これは特定の個人の話ではなく、数学科にいる人はだいたいそういう態度を取りますね。

大学の数学では、当たり前に見える事実を丁寧に論証していく態度が要求されます。直感的でラフな態度で考えることはありますが、それは論証に支えられた想像なのです。自分自身に批判的になり、細かい間違いを見逃さない態度が身につきます。

そうすると、他の人が使っている数学の間違いがよく見えます。たとえ一般の人の会話や、テレビのクイズ番組でさえ、数学的に間違っているいる議論をすれば、それを指摘するようになります。間違っていることがよく見えるから、話の中で重要なポイントでなかったとしても指摘してしまうのでしょう。

参考:「ネットの議論が不毛になる」のは、コミュニケーションの「場」を整えていないから。

また、数学の専門知識を持っている人は、ラフに数学を伝えることにあまり慣れていない傾向があります。なぜなら、数学を知っている人と数学の話をすることが多いからです。数学について学ぶ人と話をするなら、数学用語のネットワークを共有しているので、簡単に話ができます。

そうでない一般の人と話をするには、1.「厳密さを落として話す」か、2.「数学用語を段階を踏んで話す」しかありません。1.の手段だと、「本当は数学的には正しくないのだけど、わかりやすく話すにはこう話すしかないなあ」と妥協することになります。厳密に言って正しくないことを話すことは、専門知識を持っている人にとって気持ち良いことではありません。2.の手段だと、時間がかかるし、話が難しくなって相手が興味を失いやすいです。

 

たくさんの前提を踏まえて厳密に話すことは、当たり前のことではない

ここまでの話を整理すると、専門知識がコミュニケーションをさまたげる要因は、主に次の二つです。

  • 厳密化:専門知識を身につけると、厳密に話したくなる。
  • 前提の増加:専門知識を身につける人は、その話を同じ専門知識を持った人とすることが多い。そうでない人とのコミュニケーションにはコストがかかる。

厳密に話すこと、たくさんの前提を踏まえて話すこと、それ自体は全く悪いことではありません。専門家同士のコミュニケーションではそれが必要になります。

コミュニケーションが難しくなるのは、「厳密に話すこと、たくさんの前提を踏まえて話すこと」が必要かどうか、話し相手と同意が取れていない時です

つまり、専門的な知識そのものは直接コミュニケーションをさまたげる要因にはなっていません。知識を持っていると、厳密に話すこと、たくさんの前提を踏まえて話すことを当たり前と考えてしまいやすい。そうすると、話をする上で目指しているものが一般の人とはずれてしまう。

厳密に話しても、たくさんの前提を共有して話しても良いけどさー、時間と場所を弁えなヨ!(参考:時間と場所を弁えればお触りOK – pixiv

せっかく知識を持っているのなら、気持ち良くコミュニケーションの中で活用したいですね。

参考:科学コミュニケーション論における欠如モデル、文脈モデルとは?

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。