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なぜ関数という概念が生まれるのか? 自然の内在観

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、関数の話をします。関数というのは、\(y=x^2\)のような対応関係です。\(x=2\)ならば、\(y=4\)というように、さまざまな\(x\)に対して\(y\)の値がただ一つに決まるような関係です。

講座東洋思想〈第8〉東洋と西洋」の中に、自然は自然の関わり合いによって説明できるから、関数という概念が生まれるという話が出てきて、面白かったんです。

 

自然現象を、神ではなく自然によって説明する

まずは、関数概念が生まれるに至った、自然現象の捉え方に注目してみましょう。

近代科学の考え方の根本には、自然を自然の内部だけで説明しようとする態度、自然の内在観があります。

例えば、火が燃えるという現象は、ものが周囲の酸素を使って激しく酸化する現象です。火そのものが神様であると考えたり、火を神様が起こしているとは考えたりはしないわけです。

神のように、自然を超越したもの、超自然を排除する考え方が自然の内在観です。「自然現象は超自然的な原理によって支配されている」という超越観とは対立した考え方ですね。

火のないところに煙は立たないわけです。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、もしくはそれに類する者もいないのです。たぶん。

 

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自然の相互関係から関数が生まれる

さて、もう関数概念に近づいてきました。

自然の内在観によると、すべての自然現象は、自然の相互関係によって説明しなければなりません

例えば、物体の運動という自然現象を考えてみましょう。ある物体の位置\(x\)は、どのように説明されるでしょうか?

運動を考えているのですから、時間\(t\)によって変化します。また、物体の重さ\(m\)によって、位置は変わるでしょう。そして、働いている力\(F\)によって、位置は変わるでしょう。

時間\(t\)と重さ\(m\)と働いている力\(F\)が決まれば、物体の位置\(x\)がただ一つに決まる。これはまさに関数です。\(x\)は\(t\)、\(m\)、\(F\)の関数、\(x=x(t,m,F)\) な訳です。

時間も重さも力も、観測して検証できる自然の概念であって、超自然的な概念ではないのです。神や魂や精霊がものを動かしているとは考えていませんね。運動という自然現象を説明するために、他の自然概念だけで完結しています。

 

関数を頭の中から取り出す

この話が面白いのは、関数という概念を、自然に対するものの見方から説明しているところです。

中学生の頃、数学で関数という概念が突然登場して、理解できず苦しんだ人は多いのではないでしょうか。比例とか、二次関数とか……。

関数は、ある現象を他の現象によって説明しようとする考え方です。

例えば、「時速3km/hで一本道を走るAくんの位置を時間の関数として表しなさい」という問題は、「Aくんの位置」という現象を、「時間と速度」によって説明しようとしているんですね。

説明したいものを、説明できるものの組み合わせによって説明する。何もないところから何かが起こることはないですよ、というのは普通の考え方ですよね。

自然と自然は関わりあっていて、自然現象は自然で説明できますよ、という考え方を意識しておけば、関数という概念にも馴染みやすくなると思います。

追記:そもそも、関数という言葉は、functionが由来です。functionという言葉が、中国にて函数(hánshù)と音によって割り当てられました。なので、もともとは、あるものを別のものに変える機能という意味があります。

 

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木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。