どうも ^σ^ .
今週はデング熱の話題が熱かったので,その話をします.
”やっぱりマスメディアはクソだな”という使い古された主張をするつもりはないので,ご安心ください.
テレビをほとんど見ていない かつ Twitter 人間の話なので,その偏りには少し気をつけて読むと良いかと思います.
ニュースを探さなければリスクが判断できなかった
9月4日,木曜日.
いつものように Twitter を見ていたら,デング熱なるものに関するニュースが目に留まったので,中身を流し読みしました.
「デング熱 再感染すると致死率10~20%のデング出血熱発症も」 NEWSポストセブン 09月04日
デング熱に罹った人が出てきたようであるということは知っていましたが,ここにきて感染者の数が増えているので,デング熱とはそもそも何なのか,省庁,研究所,役所はどんな対策をしているのかが知りたくなりました.
「デング熱 Dengue fever」 東京都感染症情報センター
一般論としての話は載っていますが,今,日本における話がほとんど載っていません.
日本に生息する蚊も媒介となりうるのか,適切な治療がなされれば命に心配がないと言えるのか,二回罹ったら危険性はあがるのか,といった不安のケアを目的とした情報が曖昧で,不足しています.デング熱については未だよくわかっていないことがあるにしてもです.現在,どんな調査がなされているのかも公開されていません.
”予防接種はありません”,”虫刺されを防ぐ工夫”とか,そんな話だけをされても,判断する材料が少ないなと思いました.
そこで少し調べると,4日に,代々木公園の8割のエリアが都によって閉鎖されていたことを知りました.
「代々木公園、当面閉鎖 4カ所の蚊からデング熱ウイルス」 朝日新聞デジタル 09月04日
更にたくさん調べて比較した結果,9月6日の時点では,次のページが良い情報を備えていると判断しました.
「厚労省 デング熱で緊急対策会議」 NHK NEWSWEB 09月06日.関係機関を集めた会議の結果,どんな調査が行われていくかがわかります.
「新たなデング熱、神宮外苑か外濠公園 新宿御苑は閉鎖」 朝日新聞デジタル 09月06日.患者が蚊に刺されたことが確認されている場所のマップが載っています.
「デング熱受けイベント中止の動き」 NHK NEWSWEB 09月06日.イベント,団体での公園利用がどうなっていくかを考えられます.
デング熱の確認された公園などを訪れる人に向けて,開園されているか,虫除けスプレーなどが提供されているかといった情報については,それぞれのホームページを見れば知ることができるようになっています(9月6日時点).
それでも,自分の手で時間をかけてニュースを調べて適切に判断しなければ,調査の経緯や,外出のリスクがどれほどなのかといった基本的な情報が把握できないという状況では,ネットがメディアとして十分に機能しているとは思えません.
マスメディア以外に,省庁,研究所,都や区などの行政は,ネットに向けて発信する動きをしようとしているのか,情報をまとめて信頼性をもった情報を届けようとしているのかが気になります.
情報が不足しているときはどうしていますか
信頼できると思っていたメディアが,十分な情報を提供してくれないとき,どうしたらいいのでしょう.皆さんはどうしていますか.
僕は,ネットに接している時間的余裕があるときは,ネットを通して情報をかき集めています.ニュースに接した時に感じたことを Twitter に記録しながら,話題を呼んでいる情報,一次ソースとなる情報を集めてきます.十分に集まったら比較を行い,何が事実と思われるか,疑問は解消されたかを問い直します.
特に,感染症は人々の命に関係しうるセンシティブなニュースです.不安をかきたてるものならば,ソースがしっかりしていないことでも情報が広がってしまう傾向にあると思っていたので,念入りに調べようとしました.関東大震災,阪神淡路大震災,東日本大震災といった,震災下において広がる情報の扱いに学びます.
かつては広がってはいなかったが,今はかなりの拡散力をもったネットメディアとして,にちゃんねるなどの匿名掲示板,まとめサイト,個人ブログ,SNSの情報には特に気をつけています.話題を探るきっかけとしては優れていますが,殆どの場合内容は考える原料としては使えません.それらはジャンクフードです.
今回調べていて,残念だと思ったのは,公共機関のネットを通じた情報共有の少なさです.ほとんど,新聞社の報道を通してしか,知ることができませんでした.
都内のどの区に媒介となる蚊が生息しているのか,公園利用者を中心として区を訪れる人や住民に向けてどんなことを知らせようとしているのか.そのことを知るために,リアルタイムな情報が知りたかったので,都や区の Twitter アカウントを探そうとしました.Twitter に頼りすぎではと突っ込まれそうですが,安全対策についての情報発信くらい今の時代ならしているだろうと思っていました.
まず,東京都の行政に関する Twitter アカウントを探すのが面倒です.都庁は都庁,それぞれの区はそれぞれの区に Twitter アカウントの紹介ページがあり,一つにまとめられていません.
「Twitter(ツイッター)」 渋谷区 広報課 広報広聴係
「新宿区公式ツイッター・フェイスブックをご活用ください ソーシャルメディア新宿区公式アカウント」 新宿区 区政情報課 広報係
9月6日までのツイートで,デング熱に関する情報提供が全くなされていません.ほとんど形骸化しています.活用してもらう気が本当にあるのかどうかを疑いたくなります.
「東京都福祉保健局Twitter」 東京都福祉保健局 総務部 総務課 広報係
東京都福祉保健局の Twitter は,9月2日にデング熱のことに言及してはいますが,それ以降少なくとも9月6日まで,デング熱に関する新しい情報が提供されていません.
僕が言いたいのは,公共機関は Twitter をもう少し活用しなさいということではありません.したほうが良いとは思いますが,それは根本的な話ではありません.情報提供をバラバラにしてしまえば,人々は情報集めに疲弊して,質の低い情報を選んでいくようになるという話に繋がります.
デザインされていないネットで何が起こるのか
電子技術の発展を背景としたネットは,2000年以降,多くの人に普及し,携帯電話やスマートフォンでも利用されるようになってきました.それに伴い,メディアとしてのネットは発展し,情報を手に入れる手段として,ネットを利用する割合が増えてきているかと思います.
メディアは,特に人々に受け入れられる途中の段階では,人々に問題を提示します.ネットでは,その一つとして,情報の断片化ということが,今回の話で浮かび上がってきています.
テレビと違い,ネットで手に入る情報は,新聞社の人が取材してテレビ局の人が制作した番組のようにまとまっているとは限りません.厚生労働省の情報を手に入れることはできますが,そこだけではつながりや物語が見えてきません.さらにキーワードを使ってページ検索をしたり,ニュースサイトを訪れて補う必要がでてきます.情報の海を泳いで,ゴミかエサかわからないような中で,エサを自分の手で集めなければなりません.
一つの地方や国といった大きなスケールの話題でも,現状,情報は散らばっています.どこにどんな情報があるのか,どのように狙った情報を集めれば良いのか,集めた情報が自分に合ったものかどうかの判断は,すべて個人に任されます.個人がそれをするのは大変なことです.多くの人が訓練されているわけではないし,そのことの専門家でもないし,そのための時間があるとも限りません.
そんな疲れる状況では,人は楽をしようとします.それはネット利用に限らない傾向であり,自然なことです.誰かが調べた情報を借りたり,年齢のわからない誰かの意見を聞いたり,wiki やまとめサイトで状況を理解しようとします.その誰かが年齢も所属もわからなかったり,情報が複製を重ねていたものだとしてもです.
日常的な生活でも,人は,外部の情報をそれほど疑わずに受け入れて生きています.すべてを疑って生きていたら,疲れきってしまいます.災害時や感染症が流行っている時は,なおさらストレスがかかりますし,すぐにでも不安を和らげてくれる情報を求めがちです.
すると何が起こるか.事実に裏打ちされていない,信頼性が確かめられていない話が伝搬します.届いた情報のタイトルや内容がわかりにくければ,誤解も生まれるでしょう.普段からもっていた偏見が強まることもあるでしょう.個人ブログやまとめサイトなどの,理解しやすい独自な情報源を用いる人は増えるでしょう.適切な情報が入ってこなければ,それほど無理の無い形で,勝手な解釈で事実を捉えたり,正しくない事実を自覚せずにつくり出してしまうこともあるでしょう.そうして間違った理解やデマは生まれ,拡散していくのだと思います.
デマの発生まではいかなくとも,検索をする能力や,総合的な知識や,信頼性の判断がなければ,質の低い情報しか手に入れることができません.テレビが衰退したり,実世界での人のつながりが弱まってくれば,ますます貧しい情報しかもたらされないことになります.
感染症といった大きなスケールの情報を手に入れることすら,個別の人間の主体性や能力といったものに大きく依存した状況は,メディアとしてのネットのあるべき姿とは離れていると僕は思います.
情報を処理できる人,リテラシーのある人だけが,デマに惑わされず適切な情報を手に入れられるが,そうでない人に対する何のサポートもない社会やネットは,原始的な状態に見えます.それは,活版印刷のなかった頃,聖典を読み解き解釈するためのリテラシが,権力のある一部によって独占されていた時代とあまり変わらないと思います.
かといって,どこか一部の人が便利な情報を一方向的にまとめて渡すのが良いとは思えません.そうなれば,プロパガンダ,技術主義,資本主義の論理だけが活躍するようになります.誰にでも同じ情報が大量にもたらされるようになれば,人はリテラシを失い,大衆化します.
個人にも組織にも頼りきらないメディアのデザイン
話をまとめましょう.
デング熱について調べて考えて思いついたことに,次のようなことがあります.ネットでの情報提供をもう少し統一的にして,共有できるようにしたほうが良い,そしてそれはニュースサイトだけがやることではないと思いました.
より具体的に言えば, wiki のようなものあるいは wiki の集合体が一つのメディアとして確立されると良いと思います.省庁,研究所,行政,新聞社,テレビ局,それぞれがバラバラにしか情報提供していないと,本来伝わるはずのことが伝わりにくくなってしまいます.各機関が一つの wiki それぞれのページに活動や交流を記録し,トップページに全体像を提供する.個人がページにコメントできるようにして,質問を受け付けたり回答を与えたりしても良いと思います.
wiki の集合体といったのは,ポータルサイトがあったほうが良いということです.デング熱以外に,土砂災害などまた新しい問題がでてきたら,そのときに一つの wiki を簡単に設置できるようにすればよいと思います.問題ごとにバラバラな場所にあるアクセスしにくい wiki は,きっと編集されなくなってしまいます.また,ポータルという場があれば,そこに特有の考えや文化が育まれ,活用されやすくなるでしょう.
これはウェブサービス提供をしたことのない人が考えた話です.予算やプロジェクトの作成は誰がやるのかといったことは考慮に入れていません.
2014年の今は,メディアとしてのネットが人々の生活に,共同活動に,社会に,より関わるようになる過渡期であると思っています.ネットやSNSを発祥としたニュースや活動,新聞のネット進出,キュレーションサイトや,新規のネットメディアが増えてきています.
僕は,人々が自然とメディアとしてのネットに適応していくとは思いません.自然に任せたままに起こるのは,適応ではなく鈍化です.過渡期にあるからこそ,メディアとしてのネットのデザインが考えられてゆく必要があると思っています.
ネットがメディアとして占める割合が増えてきたとしても,それでも人がより良い生活を送ることができようになれば良いなと思っていて,その実践としてこのブログや Twitter をしています.
ここまで読んでくださってありがとうございました ^σ^ .