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思考のパターンを変えれば、不安は和らげられる「認知行動療法」

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

うつ病など、不安やストレスに対処するための、「認知行動療法」という方法を知っていますか?

僕は、心理学の本を読みたいと思い、文脈ゼミの活動の中で出会った「認知行動療法」という本で初めて知りました。

今回は、その重要なポイントを整理してみたいと思います。

 

認知=思考のパターンが、気持ちの感じ方を変える

認知行動療法(Cognitive behavioral therapy)では、認知というものに注目します。認知ってあまり聞きなれないですよね。認知とは、ものの考え方の癖、思考のパターンのことです。

例えば、就職活動で内定をもらえたが、単位が足りず卒業できなかった二人の大学生Aさん、Bさんがいたとしましょう。Aさんは、内定先になんと言えばいいか、授業料を払ってもらっている親に申し訳ない、留年することで就職先を見つけるのも大変になってしまうだろうと考えました。Bさんは、時間があるからアルバイトでもして、人より積極的に就職活動ができるだろうと考えました。同じ状況に置かれた二人ですが、一人は楽観的に考え、もう一人は悲観的に考えていますね。この二人の違いはなんでしょう? 「その違いは、認知ではないか?」と考えるのが認知行動療法です。

アメリカの精神科医アーロン・ベックは、うつ病の患者とそうでない患者の思考パターンを比べました。ベックは、BDI(Beck Depression Inventory)テストといううつ病テストを開発しています。彼は、うつ病患者には特有の非論理的な思考のパターン(認知のゆがみ)があることに気づきました。特有の認知の例としては、論理的な過ち、自動的な思考、将来に対する否定的な見方などがあります。

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画像引用:抑うつ度チェック – ベックのうつ病調査表 (BDI テスト)

認知のゆがみが、不安な気持ちなどの感情・行動に悪い影響を与えるのだとしたら、「認知を変えることで、行動を改善することができるのではないか?」 これが、ベックの認知療法です。(ここでいう行動 behavior とは、日本語で言う具体的な観察できる行動だけではなく、気分の変化など内面での行動も指しています。)

認知行動療法は、このベックの認知療法が大きな枠組みで、これに行動理論が合わさったものになります。

行動理論とは、生物の行動を、刺激との関係で説明するものです。例えば、条件反射を発見した「パブロフの犬の実験」が有名ですね。ベルを鳴らすと同時に、犬に餌を与えることを繰り返す。そうすると、犬はベルを鳴らしただけで、餌を与えなくても唾を出すようになる。ベルという刺激から、唾を出すという行動が学習される。

でも、人間の行動が行動主義で全て説明できるのでしょうか? 刺激を学習して、行動しているのでしょうか。人間は、同じような刺激を受けても、違う行動をして成長していきます。つまり、「刺激→行動」という関係性ではなく、「刺激→(刺激に対する)認知→行動」という流れがあるのではないか。

こうして、認知療法と行動療法が合わさったものが認知行動療法です。

単極性のうつ病のほか、不安障害(パニック障害、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害など)、不眠症、摂食障害、統合失調症、などの治療に有効と言われています。

参考:認知行動療法とは – 認知行動療法センター

 

認知を知るためには、セルフモニタリングが有効

さて、ここまでかなり理論的な話をしてきましたが、認知行動療法が面白いのは、実践的であるところです。

「認知は行動に影響している」という仮説のもと、認知をターゲットとし、認知を変えることで行動を変えることを狙う。それが認知行動療法でした。

さて、認知を変えるためにはどうすれば良いのでしょうか。正体がわからないものを変えることはできません。自分の認知を知る必要があります。そこで登場するのが、自らの思考のパターンを観察すること、すなわちセルフモニタリングです。

例えば、初対面の人と話さなければならない状況でどうしても緊張してしまうという症状を変えたいとしましょう。セルフモニタリングでは、自分の行動を記録します。お店の人と話した、職場の人と話した、家の近くの人とすれ違った時に挨拶した、などなど。そして、それぞれの時、どういう気持ちで、どう思ったのかを一覧にしていきます。さらに、どれくらい緊張したのか点数をつけて、並び替えてみましょう。どうして、その緊張度合いの点数の評価になるのか、どんな環境でどんな考えが働きやすいのか、自然とわかってくると思います。

このセルフモニタリングの手法は、うつ病に限らず、様々な場面で使うことができます。自分にできない行動があって、それを変えたい時は、自分の思考パターンに注目すればいいのです。どんな時にどれくらいの不安を感じて、それがなぜなのか、自分にはどんな思考の癖があるのかに気づくことで、認知は変えることができます

アドラー哲学では、「今この瞬間から変われる」と主張していますが、それは哲学的な主張で、いざ実践するのは難しいと思う人もいるでしょう。

参考:アドラー哲学の入門書「嫌われる勇気」を読んで、好きなことができるようになった

認知行動療法は、「自分を変えるためのヒントは、自分の考え方のクセを知ることにある」とも読み解けます。自分の気持ちや考えを観察することで、より楽しく生きられるかもしれません。是非、試してみてください。

 

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木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 

参考:なぜ、東京から引っ越して、高知の嶺北地域に住むのか? 学びのインフラとして個人大学、文脈ゼミをはじめます

参考:【参加者募集(一時停止)】ゼミって何をするの? 文脈ゼミの手引きその1

参考:「教わる」つまらなさよりも、「学ぶ」楽しみを。 文脈ゼミの手引きその2

参考:ゼミの準備って何をすればいいの? 文脈ゼミの手引きその3

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