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「性の喜びおじさん」をとりまく2016年のインターネットを振り返る

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、2016年10月にネット上で話題になった通称「性の喜びおじさん」を紹介し、2016年のインターネットについて考えてみたいと思います。

性の喜びおじさんとは

僕が彼を知ったのは、10月1日、ニコニコ動画の例のアレカテゴリで次の動画を見たときのことでした。電車に乗っている男性が一人で話しています。

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性の喜びを知りやがって! 許さんぞ! 性の喜びを知りやがって自分たちばっかし、俺にもさせろよ!

週末には彼氏彼女の部屋に泊まりに行くくせに。Weekend Loverの癖に。冗談じゃないよ! そして、そのWeekend Loverのために色んなことをするんだろ。「ああでもないこうでもない」って。クソ……。あんなことこんなこと、ドラえもんみたいにヤっとんだろ。

溢れる言語センス、黒を基調とした渋いファッションとがっちりした体型に心奪われました。文章だけではあのリズムは表現しきれません。テンポが良いので、ぜひ自分の耳で確かめてほしいです。

記事執筆時点での動画タイトルは「Weekend Lovers」ですが、当初の動画タイトルは「性の喜びを知りやがって!!」でした。このことから、男性は「性の喜びおじさん」と呼ばれることになりました。

この記事を書くにあたり調べてみたところ、ニコニコ動画に投稿した人=撮影者ではありませんでした。9月29日のこのツイートが元となっています。

ニコニコ動画の例のアレカテゴリには、「ホモと見る〜」というタイトルをつけて外部の動画を(無断)転載する文化があります。これまでにYoutubeから発掘されてきた人物としては、たれぞうさん、syamu_gameさんaiueo700さんがいます。

例のアレを見ていたユーザーにとっては、特に8-9月に人気を博していたaiueo700さんの動画の勢いが落ちてきたこともあり、性の喜びおじさんは新たな人物として評価されたのでしょう。

Twitter発・リアル突撃を含めた拡散

性の喜びおじさんの話題になり方は、僕のこれまでの人生の中で初めて見る種類のものでした。

このツイートは5万リツイート以上され、ツイッターユーザーの間でも広くされていることがわかります。Twitterを検索すると、10-11月頃に性の喜びおじさんに実際に会い、撮影したツイートが見つかります。中高大学生など、若いユーザーに人気なのです。まるで会いに行ける芸能人のような扱いになっていました。

これは驚くべきことです。aiueo700さんの件でも、直接押しかける(突撃)する人がいたことに驚きましたが、今回は個人の特定しやすいツイッターで堂々とつぶやいている人が多いのです。結果的には、性の喜びおじさんは一緒に写真に写ってくれたようですが、もし本人が嫌がっていたら危ない事態だったと思います。

これは別の人物ですが、過去には、2ちゃんねるで炎上した人物が、住所を特定され押しかける事態がありました(いわゆるハセカラ。炎上に対する「制裁」という名目で突撃をするのは、匿名掲示板での炎上に限ったことだと思い込んでいた。

ところが今回の件で、Twitterを利用する普通の人でも、ネットをきっかけに押しかける事態が起こってしまう時代になったのだと痛感しました。テレビに映った芸能人ではないのに、Twitterの一部で話題になった人が同じくらいのレベルで有名になっているということです。

また同じような現象は起こりうる

今回の騒動は、話題になってから時間が経ったこともあり落ち着いてきました。

でも、冷静に考えてみると、元の動画は男性に許可を得ていない動画です。これは自ら動画をアップしたaiueo700さんのケースとは違います。

実際、Twitterでそれを問題する声がありました。1.盗撮ではないか、2.病気と思われる人を笑わないでほしいという2点がポイントです。

「性の喜びを知りやがって」発言の一般人男性が盗撮されネット上で玩具にされている事について – Togetter

僕も、無許可で撮影された動画を見て人を笑うのは良くないという立場です。

ただし、「盗撮である」という状況に気づかないで見たときに、面白いと思った自分がいたこともまた事実です

冷静に考えれば、「盗撮だから」「人を笑っているから」やめるべきなのは当たり前のことです。「モラルに反しているからやめよう」、「これを楽しんでいる人はなんてリテラシーがないのだ」、「これはいじめだ」と嘆くことでは、こうした事態は防げないと思います。

そんなに単純な切り方をしていたら、「事実としてTwitterで広がった」ことの重要性を忘れてしまいます。実際、拡散されていなければそれほど問題ではありません。正義の立場にのって、拡散する人の視点を見失いようにしたいものです。

パクツイbot(Copy__writing)の中の人、インタビューに答えて炎上 – Togetter

今年の1月には、コピーライティングをテーマにしたTwitterアカウントの中の人が、ツイートを無断でパクっていたことによって炎上した事件がありました。しかし、現在でもこのアカウントは動いてフォロワーが100万人いますし、他にもパクリツイートをするアカウントはたくさんあります。

性の喜びおじさんの件も似たようなもので、いくら悪いからといって、それだけで話題を止めることはできないのだと思います。また新たな人物が発掘され、同じようなことが起こる可能性は十分にあるでしょう。特にリアルな人物がネットで急に話題になっているときは、今回のことを思い出せるようにしたいですね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。