どうも、木村(@kimu3_slime)です。
ニコニコ動画で2008年頃に最も人気を集めた「ガチムチパンツレスリング」シリーズ。最近はランキングで見かけることが少なくなりました。
いつ流行り、なぜ衰退したのか? 今回は、それを調べてまとめます。
ガチムチパンツレスリングとは
ガチムチパンツレスリングとは、競技としてのレスリングではなく、ゲイの男性がパンツを取り合うレスリングの通称。
主に、「本格的 ガチムチパンツレスリング」という動画がニコニコ動画では有名になっています。2016年時点で760万回再生され、ニコニコ動画でもっとも有名な動画のひとつと言っても過言ではないでしょう。強烈な肉体美が含まれるので、閲覧注意。
[nicodo]sm1175788[/nicodo]メインの人物は、ビリー・ハリントン(Billy Herrington)さん。兄貴と呼ばれ親しまれています。
元となった作品のタイトルは「Workout: The Director’s Cut」ですね。
動画を見てもらえればわかりますが、この動画や関連作品の動画で、ニコニコユーザー(ニコ厨)による空耳が流行りました。レスリングがもとになっている有名な言葉としては、
最近だらしねぇな(Like embarrassing me, huh?)
歪みねえな(You got me mad now)
あぁん?あんかけチャーハン?(Huh? How do you like that, huh?)
ナウい♂息子 (Now even score)
など。これは流行った空耳ほんのごく一部です。(参考:本格的ガチムチ英会話 – 本格的 ガチムチパンツレスリングまとめwiki)
当時のニコニコ動画は、今よりも歌やMADの空耳が全体的に流行っていました。ヤマジュン、ひぐらし、テニミュ、フタエノキワミ、初音ミク……懐かしい響きです。(参考:ニコニコ動画初期(2007年、(仮)〜(β))の話をしよう 空耳コメントの面白さ)
なぜ流行ったか? 工作スレでの人気
ガチムチランキングは、ニコニコでいつ、どのように人気になったのでしょうか?
最初は、2007年のことです。最初は、にちゃんねるのYoutube板「ニコニコ動画工作支持スレ」の工作によるものでした。
工作とは、アカウントを多数作成するなどの手段で、不正に特定の動画のマイリスト数などを増やすことですね。
「ゲイレスリング」が言及されているもっとも古い書き込みはこちら。
[nicodo]sm200572[/nicodo]332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/06(月) 04:57:04 ID:Kj6rPOy70
だめもとで言ってみるアメリカン ゲイレスリング
http://www.nicovideo.jp/watch/sm200572神様見てたらこれを工作で1位にしてくれ~><
513 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/07(火) 13:20:28 ID:???0
ゲイレスリング頼んだ者ですが、いつの間にかランクが上がってて朝から吹きましたw
皆さんご協力ありがとうございます~557 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/08(水) 01:04:46 ID:???0
ゲイレスリングクソワロタwww
そういえば最近くそみそ工作員を見なくなったな…作者米で自重したのか…
その後徐々に「兄貴」がスレで人気になっていきます。2007年9月14日に立てられたこのスレを読めば、一種のブームがすでに起こっていることがわかりますね。
こうして、兄貴の動画は何度もランキング入りすることになり、やがて工作に関係なく一般のニコニコユーザーの人気をつかみました。
当時のニコニコ動画では「くそみそテクニック」が流行っていて、いわゆるホモネタを受け入れる土壌がすでにあったことも、一般に広がった要因として挙げられるでしょう。
参考:日本のインターネットにおけるホモネタの歴史【前編】 – ねとぽよ
なぜ衰退したのか?
2011-12年は人気を維持するが、2013-2014年で急激に衰退
2010年1月に「例のアレ」カテゴリタグができてからも、人気を継続させたレスリングシリーズ。しかし、現在ではランキングで見ることはなくなってしまいました。
ニコチャートで「本格的 ガチムチパンツレスリング」の月間ランキングの変化を見てみます。
2011年は10-30位、2012年は10-30位、2013年は30-100位、2014年は100位前後と下がっていくのがわかりますね。
2013年は、淫夢・クッキー☆がランキングに入ることが増えた年です。
参考:迫真空手部・インタビューシリーズで確立された「野獣先輩」の人気 真夏の夜の淫夢入門その3
それでも2013年はまだレスリングシリーズの方が優勢です。しかし、2014年以降のランキングを見ると、急にレスリングがほぼ見えなくなってしまっている。何が起こったのでしょうか?
2014年お正月に何が起こったのか?
「レスリング」と「淫夢・クッキー☆」の勢力図が劇的に変わったのは、2014年のお正月。僕は過去のランキングを見て、驚きました!
1月1日のランキングでは、上位5位をレスリングが独占しています。
画像引用:2014年1月1日 例のアレ デイリー総合ランキング – ニコニコチャート
ところが、その数日後の1月4日のランキングでは、逆に淫夢・クッキー☆が上位5位を独占しています。
そして、この傾向がほぼ持続して、レスリングはほぼ跡形もなく消えてしまうのです。
画像引用:2014年1月4日 例のアレ デイリー総合ランキング – ニコニコチャート
これはたまたまそういう日があっただけなのではないか? と疑う方は、ぜひ自分の目で2014年お正月の例のアレランキングを見てください。僕も目を疑いました。
なぜ、淫夢・クッキー☆は伸びたのか?
「2014年は淫夢・クッキー☆の年だ」と言わんばかりにランキング入りする動画が増えました。これはなぜなのでしょうか? レスリングと淫夢、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い。
ブームの理由はたくさんありますし、「これだ」とひとつに決められるものではありません。
淫夢・クッキー☆が、2013年に動画を貯めていたことは影響しているでしょう。下積み期間ですね。 トレーニングはやってます。
「音MAD」の時代から「ストーリー」の時代へ
僕は、2014年お正月のランキング入りした動画について、レスリングと淫夢・クッキー☆の違いが何なのか見比べながら考えていました。
すると、ある違いがあることに気づきました。
それは、レスリングは「音MAD・メドレー」が多く、淫夢・クッキーは「ストーリー・ランキング動画」が多いということ。
例えばランキング上位だった次の動画は典型的です。
[nicodo]sm22568274[/nicodo] [nicodo]sm22571543[/nicodo] [nicodo]sm22587796[/nicodo]
この現象を端的に、「音MAD」の時代から「ストーリー」の時代への変化と呼んでみましょう。
どういうことか。
レスリングの動画は、「ムキムキの男がパンツを取り合う」という絵面と、「だらしねえな」などの空耳が人気を集めていたのでした。これは音MADやメドレーを作るのにぴったりです。
もちろん淫夢にも音MADに適した要素はありますが、面白がられているのはストーリーの要素です。4章は、「部活の後輩を日光浴に誘い、騙して睡眠薬を飲ませて犯す」という人間の屑のようなストーリー。キャラクターの設定があり、場面の転換があります。これは人気の空手部・インタビューシリーズでも同じですね。
2014年以前にランキングで主に評価されていたのは、音MAD的なものでした。どんな映像とどんな音声を、どれだけ上手く組みあわせてひとつの曲として聞かせるか。それが音MADの人気勝負です。この傾向はニコニコ動画初期からあるものです。
新しく登場したのが、ストーリー的なものです。どんなシチュエーションで、キャラが何を演じて、話がどう転じるのか。それがストーリーの人気勝負です。
言い換えれば、動画の中で見せているもの・ランキングで評価されやすいものが、「曲」から「設定」に変わったということでしょう。
レスリングシリーズは、ストーリーの動画を作る素材に乏しかった。だから、衰退してしまった。
というのが僕の考察です。
今回の話はあくまでランキングで評価される動画の傾向の話です。もちろんレスリングにストーリーを持った動画もありますし、淫夢の音MADもたくさんあります。
例のアレでのブーム全体を見ると、音MAD的なジャンルが長く続くこと自体が珍しいです。
例えば、東山源次や性の喜びおじさん、FF外などは音MAD的なブームのぶり返しです。ある一瞬がキャッチーで火がつくスピードが速いのですが、その分消えるのも早い。数はたくさん出現するのですが、どれもすぐに勢いを失ってしまいます。
これらに比べると、レスリングシリーズはブームが2008-13年と実に6年も続いたのは偉大としか言いようがありません。それに、2008年に他に流行っていた音MADを今知っている人がどれだけいることか……。やっぱり、レスリングは歪みねぇな♂
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。