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わからないことが一つあれば、できることが一つ増える。

ぼくは3人以上の人を相手に語るのが、あまり得意ではない。

話し終わると、「えっそれだけなの」「いや、黙らないで、続けて続けて」と言われることがある。

予め用意した話でないと、話そうとしても思い出せないことが多いのだ。

 

ものや人の名前を覚えるのにも、苦労する。

らく」「えん」というお店に行ったことが何回かあるのだが、その名前も、どっちがどっちだかわからなくなる。

つかさ」と「しばた」もよく間違える。

名前や年号を覚えさせられる歴史の授業は苦手で、中学高校の間、テストでは20-30点代だった。

 

どうして語りにくいのか。ものの名前を覚えるのがどうして苦手なのか。

それは、ぼくに関連していないことを扱おうとしているからだ。

興味のないものについて語れる人や、覚えられる人はなかなかいない。

いないわけではないが、稀な存在だ。

いまのぼくに関連していることしか、ぼくにはできない。

 

話すための引き出しの少なさに、小学生から今までコンプレックスを抱えていた。

どうしてみんな、そんなに覚えていられるのだろう?

どうして、そんなに話し続けられるのだろう?

ぼくにはとてもできないことだ、と。

 

できないのに悩んでいたということは、覚えたり話したりすることが本当はできたらいいなと思っていたということだ。

きっと、人と仲良くなりたかったのだろう。

その気持ちはあったけれど、そのために自分で何かをしてみる興味がなかった。

その興味は、今もない。それが、ぼくなのだ。

 

興味の範囲が狭くたっていいじゃないか。

無理に広げようとしたって、広がるものではない。すぐに忘れてしまうのだし。

一時しのぎにそんなに時間をかけず、楽しいことをやっていこう。

 

話すことが苦手な代わりに、黙って考えることは好きになった。

ものを覚えるのが苦手な代わりに、ひたすらにメモするようになった。

わからないことが一つあれば、その代わりにできることが一つ増えるのだ。

そう考えて、生きてこう。