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「いじめ」が記憶に残るのはなぜ? 記憶と情動の脳科学

心理学について友人と話していたときに、こんな会話があった。

スクールカウンセラーはどうして導入されたのか。

「いじめ」が認知されるようになってきた時期だっけ?

そういえば、いじめって、2000年台の前半から注目されるようになったよね。

いじめという現象は昔からあっただろうに、現代になって問題視されるようになったのはなんでなんだろうね。

 

そんな話をしていて、思い出す本があった。

記憶と情動の脳科学―「忘れにくい記憶」の作られ方 (ブルーバックス)
ジェームズ・L.マッガウ
講談社
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記憶と情動の脳科学というブルーバックスの本だ。

 

大事件、大事故、大災害。これらのことは、どうして時間がたっても生々しく思い出せるのか。このことはフラッシュバルブ記憶という名前で、研究が行われてきたという。

 

本の中で印象に残っているのは次の部分だ。

p.180 インパクトがあり、強い情動反応を引き起こした出来事は、強烈でいつまでも残る記憶を作り出すのです。

 

また、とある実験から、繰り返すことによる記憶の強化は情動による強化よりも小さいと主張した。

実験は、被験者を、平凡な映画と情動をかきたてる映画を見せるグループに分けたものだ。さらに、話し合いをさせる集団、禁じる集団、自由にする集団に分けて、記憶の定着度合いを比べたものだった。

 

p.187 つまり、映画について話をして(内容を話したり感想を他人と共有しようとしたりして)、記憶を反復しても、記憶のされかたに影響はなかったということです。もちろん、このことは記憶の反復が記憶に影響をおよぼす力がないことを意味しているわけではありません。この研究で示されたのは、映画に関するある程度の量の議論くらいでは、記憶に影響を与えることはなかったということです。

情動をかきたてると、よく記憶される。

記憶が強くなるのは、繰り返しによるところが大きいし、他の影響はあまりないだろうと考えていた自分には、面白い考え方だった。

 

いじめという現象が、人の記憶に残っていて、社会問題として認識されるようになってきたのは、なぜか。

それが、単に繰り返し報道されてきたからだけでなく、心を揺さぶられる現象だからではないか。

 

こう考えるのは、いじめについてに限らない。例えば食品への異物混入などがそうだ。ニュースやSNSで、事の重大性は大したことないのに、妙に話題になっているのはどうしてなんだろうという疑問をもつことはあるだろう。

それも、心の動きが記憶に強い影響を与えるとなれば、それほど不思議ではなくなるだろう。客観的に大事なことよりも、「いやだ」とか「きもちわるい」とか「おそろしい」と感じることの方が記憶に残りやすいなら、話題になるのも、もっともなことではないだろうか。