何もわからない子供には音楽もノイズに聞こえる
この世界はこんがらがっている。
生まれたばかりの子供には、この世界で何が起こっているのかまるでわからない。
見える。動く。聞こえる。ほとんどすべてがノイズで、意味なんて捉えられない。
人に育てられて大きくなっていくと、雑音の中に規則性が見えるようになってくる。言葉を聞いたり話したり、読んだり書いたりすることができるようになってくる。
この社会はこんがらがっている。
そのこんがらがったものを読み解くために大事なものを、教育という制度はわかりやすく伝えようとする。そのために訓練された先生という人を用意したり、人類が積み上げてきた知識を元にして教科書を作ったりする。
最近良く耳にする「編集」という言葉も、たくさんの情報があって変化が激しい社会だからこそ注目されているのだろう。
こんがらがったものを見ていても、感動することはできない。
解きほぐさなければ、僕の頭の中はパンクしてしまう。
生きていて何にも感じることができないのは、悲しいことだ。
言葉は解きほぐす力をもっている
だから、僕は文章で整理して記録をする癖があるのだと思う。
人一倍、物事を理解するのに時間がかかるから。
人一倍、理解できずに忘れてしまうことが多いから。
言葉にして考えを見えるようにすれば、ぐちゃぐちゃに見えていたものもどうにか扱えるようになってくる。
少しでも、残したい。
自分が理解できたことを。そうして、楽しいと思ったり、悲しいと思ったことを。便利な方法や、大切にしようと思った思想を。
せっかくなら、それを人の役に立つような形で提供できるようになりたい。記録するだけではもったいない。人はコミュニケーションをとり合って生きていける生き物なのだから、自分だけに通用する知恵を、他の人にも理解できるような形にアレンジして伝えていきたい。
自分の頭の中は、放っておけば、ポケットに入れたイヤホンのように絡まっていく。ガッチリと固まって使い物にならなくなってしまわないように、言葉を使って整理して、気持ちよく音楽を聞いていたい。