どうも、木村(@kimu3_slime)です。
「高校生の初コミックマーケット参加・初同人ショップ体験 僕と東方Projectとの出会いその3」にて、東方Projectの原作品を手に入れた高校1年生の僕。
その後、「インターネットを使って一緒にものを作ること」の楽しさを知ることになります。今回はその話をしていきましょう。
みんなの東方体験が集まってくる場所、wiki
2007年、東方紅魔郷、妖々夢、永夜抄、風神録などの作品を遊ぶ中で、インターネットで東方の情報を調べるようになりました。
TwitterやFacebookのない当時、情報が整理して集まっている場所はwikiでした。wikiというのは、誰でも簡単にウェブページを作成・編集できる仕組みのことです。
東方wiki
東方wikiには、東方年表、幻想郷年表、音楽一覧、キャラ別スペルカードなど、「公式設定集」と呼んでよいくらいの公式情報が集まっています。
その一方で、僕の目を引いたのが「東方スレ」の情報です。
東方スレ的キャラ紹介、東方スレ用語辞典には、匿名掲示板の中で生み出された東方情報がまとまっています。本家本元の東方キャラの特徴を残しつつ、それを拡大解釈した設定。それは、原作(一次創作)に対して、二次創作と呼ばれます。
例えば、原作者がゲーム内で使っていた「慧音が言ってた」というコメントが、「けーねが言ってた」と書き換えられ使われていますね(参考:東方スレ用語事典)。他にもたくさんの二次創作から生まれた「東方」像があります。
東方と二次創作について書くとそれだけでまた大量に文章ができてしまうので、またの機会に。とにかく、匿名掲示板や各種東方二次創作で生まれた「東方」像をまとめる場所として、wikiは機能していたと言えるでしょう。
東方攻略wiki
画像はあえて当時の東方攻略wikiを使いました。現在の東方Project攻略wikiはこちら。
東方攻略wikiには、個別の作品の攻略情報など、攻略に関するあらゆる情報が集まっています。特に、弾幕シューティングゲーム初心者のための「弾幕基本講座」には、どの作品にも通用する基本的で重要な知識が残されていて、必読です。
当時の攻略wikiのAbout This Pageに書いてあるように、攻略wikiは、東方攻略系スレをまとめたものとなっています。
僕はそれまで匿名掲示板をほとんど見たことがなかったのですが、東方wikiや東方攻略wikiとの出会いをきっかけにウォッチするようになりました。だって、wikiにはまだ載っていない最新情報が集まっているんですもの。
wiki文化の源となった匿名掲示板群、アップローダ
匿名掲示板に馴染みのない人のために、少しだけ説明を入れておきます。
2ちゃんねるやしたらば、ふたば☆ちゃんねるなどの匿名掲示板群は、音楽板、ゲーム板など「板」によって大まかな話題が分かれています。
さらに細かく分けた「スレッド(スレ)」が書き込みをする一つの単位です。一つのスレは1000になると満タンになって書き込めなくなります。人がいるスレッドでは、次のスレッド(次スレ)を建てて継続していきますね。
東方シリーズ総合スレッド(ゲサロ本スレ)
のちに本スレと呼ばれることになる「東方シリーズ総合スレッド」は、2003年にゲームサロン板に登場しました。ゲームサロンを略してゲサロ、あるいはゲロとも。
このブログを書いている2016年5月時点でもスレは続いていて、通算7500スレを超えています。(参考:惞符「東方シリーズ総合スレッド 7557/7557」)東方本スレどこー?
匿名掲示板2ちゃんねるに出現した東方シリーズの本スレは、東方Projectという当初はマイナーだったゲームのファンが集まるコミュニティとして機能していました。
現在では、すでに東方Projectだけで板が建っています。でもやっぱり、僕にとっての東方スレと言えば、ゲサロの本スレなんですよねえ。
東方シリーズ攻略スレッド(シューティングゲーム板攻略スレ)
僕が主に常駐していたのは、この東方シリーズ攻略スレッドでした。
2007-2008年、原作にハマってプレイしまくっていた自分にとって、これほど良い情報交換の場所はありませんでした。
同人弾幕シューティング「東方紅魔郷」「東方妖々夢」を中心とした
一連の東方シリーズの攻略やプレイ環境などを語り合うスレッドです。キャラ萌え・攻略などについて激しく語りたい方はゲサロの本スレにて、
エロネタはエロパロのネチョスレにてどうぞ。
スレッドを建てた人の文章(スレのテンプレ)では、全般情報を扱った本スレやエロネタを扱ったネチョスレとの分離が呼びかけられています。
基本的にハンドルネームすら表記しない匿名掲示板ではありますが、できるだけ多くの人が快適に利用できるために自治活動が行われていたことがわかります。wikiや掲示板は、みんなで話し合って管理・運営するものなんですよね。
東方幻想板(したらば)
2ちゃんねるに掲示板はありましたが、東方ファンが増えるにつれスペースが足りなくなってきました。ゲームサロン板では真面目な東方考察をするのも難しいですし、かといってシューティング板では攻略以外の話題はできない。だからといってゲームサロン板にいくつも東方関係のスレッドを立てたら、「話題が重複している」と他の2ちゃんねるユーザーから見られています。
そこでよく利用されたいたのが、レンタル掲示板したらばを利用した東方幻想板(旧名:東方シリーズ板)です。ここなら、東方関係のスレッドを好き勝手建てても良い。
好きなキャラについて、キャラの立ち絵について、原作者について、ゲームの元ネタとなった情報について、果ては東方二次創作について、東方に関することならなんでも語っていい。東方元ネタwikiはこの板の産物と言って良いでしょう。
現在の板が出来た時期がニコニコ動画で東方が爆発的に流行し、同時にそれが警戒された時期と重なる(2008年)。このことから、ローカルルールでnicovideo.jpが入ったURLを書きこむ事が出来ない。
何でも受け入れるとはいえ、当時の匿名掲示板の空気として、ニコニコ動画は受け入れられていませんでした。
[nicodo]sm201996[/nicodo]東方二次創作「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」のニコニコ動画でのブームなどをきっかけに東方を知った層は、匿名掲示板を見ていた層とは異なるものとされていました。新参東方厨という言葉もあるくらいです。
僕も当時は、二次創作ネタのみを知って「東方」を語られることに抵抗感を持っていました。しかし、このブログ記事でもこうして書いているように、東方原作はハイコンテストであり、敷居が高い。新しく知った人を「にわか」と突っぱねれば、「自分たちが培ってきた東方の文脈」は守れますが、その守れたものはどんどん古びていってしまう。
ちょっとしたファンになった人が、東方原作、あるいは東方二次創作のファンになってくれれば良いなと思う。ニコニコ動画がきっかけでも、二次創作がきっかけでも、どんなきっかけでもいい。新しい人が入ってこない・入りにくいコミュニティでは、新しい文化も生まれず、縮小していくばかりだろう。
東方幻想板は、2015年には凍結され、東方寄書板に引き継がれています。
Coolierのうpろだ
少し熱くなってしまったが、話を戻そう。
東方関係の匿名掲示板の勢いを支えていたのは、外部のアップローダです。
掲示板にはテキストしか書き込むことができない。ゲームのリプレイデータ、自分で書いてみた東方イラスト・小説、自分でアレンジしてみた東方音楽。そういった作品を公開するための手段として、アップローダがありました。
最もよく利用されていたのは、個人ホームページ「Coolie」のアップローダ(うpろだ)だ。運営者の虻(あぶ)さんの名前を知っている東方ファンは多いだろう。
画像引用:Coolie
[nicodo]sm477854[/nicodo]
東方妖々夢「ネクロファンタジア」を独自の歌詞をつけて男性が合唱した「ゆかりんファンタジア」は、ひどい(褒め言葉)アレンジである。この曲は、Coolierのうpろだにアップされていた。現在では過去データが消えてしまったようですが、Coolierのうpろだは当時の東方文化を反映していました。
東方Projectスコアボード
Coolierのアップローダは東方全般のファイルを扱っているアップローダでたが、「東方Projectスコアボード」は東方原作のリプレイファイルのみを扱っています。
画像引用:東方Projectスコアボード
当時僕が使っていたハンドルネーム「Slime」、「水性すらいむ」でスコアボードを調べると、僕のリプレイを見つけることができます。紅魔郷、永夜抄、風神録あたりでは上位に名前を残しています。(参考:東方プレイヤー 水性すらいむ(Slime)について。)
東方プレイヤーとして記録を残すためのブログ
当時から、東方原作・東方二次創作のファンの声に比べて、東方プレイヤーの声は少なかったと思います。シューティングゲームとしてかなりやさしい難易度である東方とはいえ、ゲーマーそのものの人口比率が低いので、原作を楽しめる人がそもそもあまり多くはない印象があります。
僕は東方ファンの中でも、東方プレイヤーであると自認していたため、その仲間を探していました。そんな時に見つけたのが、ASLさんが作っていた東方プレイヤーアンテナです。アンテナには、東方プレイヤーのブログ更新情報が自動的に集まってきます。
そこで知った、永夜抄500時間 – log::dualという記事は今でも懐かしく覚えています。
僕は、「東の方にあるすらいむ」というタイトルでブログをやっていました。
画像引用:東の方にあるすらいむ
このブログを2年間毎日更新し続けていた2007-2008年(高1-高2夏)の頃が、僕が最も東方をプレイしていた時期です。
ブログの内容は1-3行で、「今日はこのゲームをプレイした」とか、「記録を更新した」とかそれだけです。でも、「ゲームをプレイし続けながら、その様子をブログとして記録して、情報を集めながら考察してゲームプレイを改善する」というスタイルは、僕が好きなことなんだなと気づきました。そうした考察が、ブログという形でちょっとでも他の人に役に立てば楽しいものです。
「僕は東方Projectのゲームをこれだけ集中してやりこむことができるのだから、他のことでもっと人の役に立てるのでは……? ゲームよりも楽しいことって何だろう?」と考えて、高校2年生の冬、僕は大学に進学することにしました。「受験参考書の情報を2ちゃんねるで集める」という発想があったのは、僕が東方Projectのファンだったからなんですね。(参考:「教わる」つまらなさよりも、「学ぶ」楽しみを。 文脈ゼミの手引きその2)
ようやく話が2016年まで近づいてきました。次回は、再び東方二次創作文化への興味を取り戻すきっかけとなった、最近のニコニコ動画のことを書こうかと思います。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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