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アドラー哲学の入門書「嫌われる勇気」を読んで、好きなことができるようになった

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

僕は、できることなら自分の好き勝手に生きたいです。そんな風に思いながらも、社会から外れてしまうのではないかと恐れてしまう自分もいます。

「嫌われる勇気」という本は、自立したいのかそうでないのかはっきりしない考え方を持った心に話しかけ、自分らしく生きることを応援してくれました。

 

ぼくの人生には、ぼくを大切にする考えがなかった

「きみは、自分のやりたいことをもっと人に伝えた方が良い」

初めてできた友達にそう教えてもらったのは、大学1年生、18のときだった。

それまで、ぼくにとって大切なことは、ぼくの気持ちではなくて、家族がしあわせでいることだった。社会が良い状態であることだった。そこに、ぼくという人間はいなかった。

参考:どうか、伝わらないコミュニケーションを続けるのは、やめてくれ。ぼくが手伝うから。

 

しかし、人と話したり、読書やTwitterで自分の考えを深めたりする中で、その考え方は間違っていたことに気づく。

参考:泣くほど苦手だった文章作成が、Twitterのおかげで好きになった

参考:タスク管理術の名著「ストレスフリーの整理術」がきっかけで、読書にハマる余裕ができた

人生においてもっとも大事にしたいことは、最初に「自分がしあわせでいること」で、その次に「家族や親しい人がしあわせでいること」が続くのだと思った。

 

でも、いくら「自分のことを大切にする」と頭の中で思っていても、具体的にどう考えていけばいいのかわからなかった。

大学で学んでいた自然科学も、「自然界の法則が客観的にどうあるか」を考え、「人間がいかに生きるべきか」という問いに直接答えてくれない。

サイエンスの世界においては、科学がもたらす技術それ自体に意味はない。乳酸菌を使って腸内環境を変えることも、光速の乗り物をつくることも、ものすごい威力の爆弾をつくることもそれ自体に意味はない。

「意味がない」とか言うとけなしてるみたいだけど、そうではなくて。人間はとかく何でも意味を見出したがるので、科学は「あえて」意味を設定しない。自然という、人間の先入観を超えた現象にアプローチするには「私は〜」という視点を棚上げにしなければいけない

引用:「今、ここにあること」と「いつ、何時も普遍であること」のあいだ。 – hirakuogura.com

ぼくは「私」を主語にすることが、傲慢で自分勝手な考えだと思っていた。一歩引いて、自分不在で考えることが正しく中立な考え方だと思っていた。

しかしその考え方は、都合の良い説明、言い訳である。自分の意思で決めて生きることによって、人に嫌われることが恐ろしいのではないか? そう看破したのが、「嫌われる勇気」である。

 

嫌われる覚悟を持てない人は、他者の人生を生きることになる

「嫌われる勇気」の解説をしよう。

この本は、心理学者フロイト、ユングに続き注目されている哲学者・心理学者であるアルフレッド・アドラーの考え方を、対話形式で紹介している本だ。アドラー哲学の研究者である岸見一郎先生に、ライターの古賀史健さんが取材して学んだ内容を、噛み砕いて書いている。そもそもは、クリエイターと読者とつなぐサイトcakesの連載「嫌われる勇気」が好評で、書籍化されたものである。哲人と青年の言い争いが、小説のようで読みやすい

本の主張を短く要約すれば、「人は誰でも今この瞬間から変われるし、幸せになれる。嫌われる勇気さえ持てば。」というもの。

「過去のせいで変われないなんてことはない」と言います。僕は「自分を大切にしたいけれど、実際に行動としてそうすることができない」のは、自分の過去に原因があると考えたことがありました。しかし、そうではないと哲人は主張しています。「過去の原因が、今の自分を決める」ことをフロイト的な原因論と言いますが、それは正しくない。本当は、「今の自分が、何らかの目的のために、過去から理由を引っ張ってきている。」と考えています。その目的を決めているのは、過去や他者ではなく、自分だと提唱するのが、目的論という考え方です。

でも、自分が目的を決めているとはいえ、他人は変えられないじゃないか、決められないじゃないかという反論がありますどうしたって、他者に劣等感を覚えてしまうこともあるし、承認されたいと思うこともある。哲人は、その考え方を「他者の人生を生きること」だと指摘します。他者からの承認を選ぶか、承認のない自由な生き方をするか。嫌われないことを目的にして生きることは、自分の人生の課題(タスク)から逃げることになる、人生の嘘であると言い切る。

自分の課題と、他者の課題を分けて考えましょう。つまり、「課題の分離」をしましょう。自分の人生は自分の人生であり、最終的に責任を負うのは他者ではなく自分である。嫌われる勇気を持てば、対人関係の悩みから自由になれる。

 

根本的な生き方の問いを、対話を通して考える

僕はこの「課題の分離」という考え方を知ってから、自分自身のために行動できるようになりました。

身の回りや社会にはゴロゴロ問題が転がっているけれど、その多くは必ずしも自分の課題ではない。

それよりも、自分の人生をより良く生きるための課題に、ちゃんと手をつけていこうと思い、フォーカスするようになったのです。

 

嫌われる勇気

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「嫌われる勇気」は、今の自分を作る、人生を変えた一冊です。「課題の分離」をロープをナイフで切断する絵で表現しているなど、本のデザインも良いですね。

参考:人間関係の悩みに「嫌われる勇気」。レビューを書く惜しさから、写真で伝えます。

 

また、この本のおかげで、僕は哲学の面白さを知りました。アドラー心理学という言葉が流通してますが、その中身に科学的な要素は少なく、どちらかというと思想的、哲学です。登場するのは、哲人と青年ですし。

哲学的な問答をしながら話を進めていく形式はもの珍しくみえましたが、これはおそらくギリシャ哲学に倣ったものでしょう。岸見先生は、アドラー哲学以外にも、ギリシャ哲学を専門としています。

明言されていませんが、例えば「すべての悩みは人間関係の悩みである」という考え方の前提には、プラトンの「国家」があるでしょう。宇宙の中でただ一人で生きることができれば、人間関係の悩みは消えるでしょうが、そんなことはできない。一人の人間が、社会的な人間として生きようとすれば、対人関係に向き合わざるを得ないんですよね

 

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「嫌われる勇気」を既に読んでいるならば、続編の「幸せになる勇気」がオススメです。

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自分の人生を自分でデザインするためには、読書が有効です。生き方に迷った時は、「嫌われる勇気」を読んでみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。