どうも、木村(@kimu3_slime)です。
僕の好きなゲームである東方Projectの楽曲は人気で、多くの同人音楽サークルがアレンジ曲を作っています。
今回は、僕が最も好きな同人音楽サークルである凋叶棕(RD-Sounds)について語りたいと思います!
(東方って何?という方は、東方Projectカテゴリ、「ダンシング☆おにぎりと東方アレンジ 僕と東方Projectとの出会いその1」あたりをご覧ください。)
目次
凋叶棕(RD-Sounds)とは?
主観的なことを話す前に、まずは概要を。
凋叶棕(RD-Sounds)は、2005年にRDさんが結成した同人音楽サークル。メインの名義としては「RD-Sounds」、東方に関するサークル名としては「凋叶棕」を使っている。
凋叶棕は、てぃあおいえつぉんと読む。ティアオ・イエ・ツォン。中国語で、朽ちた葉の色を意味する。東方妖々夢の橙(チェン)のテーマ、「ティアオイエツォン(withered leaf)」で知っていれば思い出しやすい。
東方に関する作品は「マルチジャンルアレンジアルバム」として、だいたい半年に1回のペースでコミックマーケットでCDで配布している。弦楽器が特徴的なインストアレンジ、物語のような歌詞のボーカルアレンジが半分くらいずつ。
漢字一文字でアルバムのテーマを表した作品は数多く、2016年現在、22作品にのぼる。祭(まつり)、宴(うたげ)、趣(おもむき)、謡(うたい)、廻(めぐり)、憩(いこい)、遙(はるか)、綴(つづり)、彩(いろどり)、騙(かたり)、辿(たどり)、誘(いざない)、徒(いたずら)、改(あらため)、薦(すすめ)、望(のぞみ)、屠(ほふり)、奉(ささげ)、求(もとめ)、喩(たとえ)、密(ひそか)、掲(かかげ)。
すべての作品が、ホームページで視聴できるようになっている。また、作品はメロンブックスで委託販売されている。
好きなキャラクターはアリス。
今一言発言が許されるとしたら「アリス」というべきだと思う
— RD@凋叶棕 (@rdwithleaf) June 30, 2016
アリスに関係する曲が原曲となっている作品は数多い。「砂鉄の国のアリス(宴)」、「Peaceful Distance(憩)」、「ドア・ノッカー(綴)」、「ヒカリ(綴)」、「その扉の向こうに(綴)」、「エバーワンダラー(綴)」、「空疎、空洞、また来世(彩)」、「交響詩「魔帝」より Ⅲ.戴冠式(徒)」、「ヒカリ ~ Miscarried Princess(改)」、「弦奏交響曲「人形裁判」(望)」、「怪奇!人形の館 迷い込んだ男の運命は…(屠)」、「はじまりのワイゲルト(喩)」、「アリス・ザ・エニグマティクドール(密)」の13作品。他にも、霊夢と魔理沙の曲のアレンジは多い。
カラオケシステム「JOYSOUND」には、53曲と多くの曲が収録されている。また、人気曲の一つである「NeGa/PoSi*ラブ/コール」は、リズムゲーム「太鼓の達人」にも収録された。
ホームページ:http://www.rd-sounds.com/index.html
ブログ:http://rdsounds.blog.shinobi.jp
Twitter:https://twitter.com/rdwithleaf
Ask.fm:http://ask.fm/rdwithleaf
ゲームと小説を再構築したアレンジ、胎児の夢
僕がこのサークルの作品を買ったのは、コミックマーケット78(C78)、2010年のことだ。ホームページの視聴で、ビビっと来た。以来、2016年に至るまで、毎コミケ楽しみにしている。これほど長く買い続けている東方アレンジのサークルは、他に、「FELT」と「豚乙女」くらいだ。
凋叶棕の作品は、毎回楽しみにしている。そこには単に音楽だけではなく、物語と考察がある。
僕が初めに衝撃を受けた作品は、「謡」に収録されている「胎児の夢」だ。
[nicodo]sm14481170[/nicodo]胎児の夢とは、ダブルスポイラーにおいて古明地こいしが使ってくるスペルカードだ。細胞分裂から、魚類、植物と進化してゆく生命を模した攻撃である。
[nicodo]sm10064019[/nicodo]さらに辿ると、元ネタは夢野久作の作品「ドグラ・マグラ」だ。ドグラ・マグラは、小説三大奇書と呼ばれている。僕もダブルスポイラーで夢野久作を知ってから、本を読んでみたが、狂気あふれるめちゃくちゃ面白い小説だった。文庫本で販売されているが、青空文庫で無料で読める。
「胎児の夢」は、ドグラ・マグラを読み込んだ上で、さらにはダブルスポイラーの弾幕を再現した歌詞になっている。
小説の冒頭の文章、「胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか」は、なんと曲の歌詞にそのまま含まれている。他の生物を喰らい生き延びてきた生物には、無意識のレベルでその罪が刻まれてきた。その歴史を受け継いでいる胎児は、どんな夢を見ているのだろうか。という内容。
ドグラ・マグラには「チャカポコチャカポコ」という奇妙な文章が出てくるが、これは曲においてチャカポコしたドラムとして再現されている。
原曲は、ダブルスポイラーの「無間の鐘 ~ Infinite Nightmare」を中心として、古明地こいしに関連する曲「ハルトマンの妖怪少女」、「ラストリモート」が混ざっている。
凋叶棕のアレンジは、原曲のメロディをそのまま使わないことが多い。裏で流したり、サビの一部分で編曲して使っている。
東方アレンジにありがちなのだが、原曲のメロディを何も変えずに、楽器だけを変更しただけのアレンジが多い。例えばギター、シンセ、ピアノ、ボーカルのいずれかに置き換えたアレンジ。アレンジの質によってはそれでも楽しめるのだが、やや単調になる。凋叶棕のアレンジは、「どんな楽器を使うか」の前に、「どんなテーマでアレンジするか」がある。アリスの曲もそうだが、テーマが先にあるから、同じ原曲を違うテーマで数作品作るのだろう。
これまたボーカルアレンジにありがちだが、キャラクターのテーマをボーカルアレンジして、歌詞をそのキャラソンにすること。アニソンのような雰囲気で。凋叶棕にもそういうスタイルのアレンジもあるが、胎児の夢のように、そうでないアレンジも多い。というか、胎児の夢は、東方のメロディを組み込んでいるとはいえ、その内容はスペルカードやドグラ・マグラの世界を描いたもので、二次創作としてはかなりオリジナル性が高い。
原作をリスペクトしつつも、原作の枠からはみ出ることを恐れず、再構築しているのが凋叶棕の特徴だ。
歌詞に含まれた意味を考察するのが楽しい
二次創作サークルにもかかわらず、一つのサークルで考察・小ネタwikiが成り立っているくらい、仕込まれているネタは多い。
[nicodo]sm14898876[/nicodo]「謡」に収録されている「Un-Demystified Fantasy」の非公式MADを紹介しよう。
このアレンジは、東方萃夢想の「Demystify Feast」、霊夢のテーマである「二色蓮花蝶」が原曲。萃夢想においてレミリアとの決戦のイメージがある曲を使い、霊夢が紅魔郷において異変を解決する様を描いている。
MADを見てもらえればわかるが、歌詞には原作である東方紅魔郷の要素が隠されている。「退く事もできない哀れな虹の欠片」とは紅美鈴のことであるし、「知識だけの七曜」はパチュリー・ノーレッジ。「星を模した 永遠に幼い悪魔の業」はレミリアのスペルカードである「スターオブダビデ」、続く「千本の針の山」もスペルカードだ。
このように、歌詞によって展開されていく物語には、元ネタや隠された意味が含まれていることが多い。初見では、それを見抜くことはできないだろう。何回も何回も聞いて考察をしているうちに、「ああ、そういう意味があったのか!」と気づく。その瞬間が、凋叶棕のアルバムの醍醐味だ。
多彩な声色を使い分けるボーカリストめらみぽっぷ
凋叶棕のボーカルアレンジを語る上で、最も多くの作品にボーカルとして起用されているめらみぽっぷさんの存在に触れないわけにはいかないだろう。nayutaさん、Φ串Φさん、3Lさん、野宮あゆみさん、紫月菜乃さんがボーカルの曲も良いですが。
めらみぽっぷさんは、2007年に立ち上げたサイト「こすもぽりたん」を持ち、歌唱、作詞など音楽活動をしている。
ニコニコ動画の初期であり、東方風神録が発売された2007年、「芥川龍之介の河童」のアレンジ「にとりの唄」の歌ってみたをアップして、人気を集めた。
[nicodo]sm565657[/nicodo]同人音楽サークル「Foreground Eclipse」(俗称:ふぉあぐら)のメンバーでもある。残念ながら2013年にサークルは活動停止したが、エモ/スクリーモの良い東方アレンジを残している。
声について客観的に評するのは難しいが、個人的に思うには、めらみさんの声は小悪魔的だ。ハスキーな声で、甘く、いたずらっぽく、ポップで、引き込まれる。憩の「Peaceful Distance」のウィスパーボイスには、やられた。元気な曲も良いが、どちらかというと、「薦」の「捧げられたイメェジ」のように気だるい、怪しげで、超越的な曲に合っているなと思う。
ボーカル曲において「誰が歌っているか」が重要だなと思ったのは、めらみぽっぷさんがきっかけである。これは余談になるが、東方ボーカルアレンジを歌っていて、似た声質を持っているなと思うのは、LUNATICOのヤヤネヒロコさん、efsの阿部左さん。
はなだひょうさんのかわいいブックレット
画像引用:RD-Sounds
凋叶棕の作品を買うときに毎回楽しみにしているのが、イラストレーターのはなだひょうさんが作るブックレット。
カラフルな色と細部まで小物が含まれた絵にもかかわらず、カバー絵からはちゃんとアルバムのコンセプトが伝わってきます。デザインのセンスがあるのでしょう。
凋叶棕の初期の作品は、歌詞カード程度の紙が同梱されています。しかし、「謡」以降の作品には、歌詞のフォントや配置の仕方にこだわったブックレットが入っています。もはや、一つの絵本を読んでいるような気分でブックレットを楽しめます。
遥のブックレットにおける「NeGa/PoSi*ラブ/コール」と「盲目の笑顔」のイラストは衝撃的でした。対比の美しさ、崩れて隠された歌詞、絵を良く見るとわかる恐ろしい事実。元の絵は、pixivでも公開されています。
はなだひょうさんは、RDさんの曲と歌詞、そこから生み出される物語をイラストによって生み出している伴奏者だと思います。「はなだひょうさんなしに凋叶棕はない」というと言い過ぎかもしれませんが、それくらいCDのイラストも楽しみにしています。
ホームページ:ホシニセ
Pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=94225
作詞作曲を行うRDさん、ボーカルのめらみぽっぷさん、イラストを描くはなだひょうさん、この人たちが集まって、凋叶棕の物語的な東方アレンジは作られています。
東方の音楽に興味がある人は、ぜひ凋叶棕をチェックしてみてください。初めて聞くなら、この記事でも紹介した、謡、廻、遥のサンプルがオススメです(リンク先ですぐに聞けます)。作品は、メロンブックスの通販で買えますよ。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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