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「女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?」の「グルグル思考」に興味を持った理由

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

謎の科学(?)エンターテインメント番組「すイエんサー」から生まれた本「女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?」を読みました。

提示されている「グルグル思考」に興味を持ったのですが、まずはこの本になぜ興味を持ったかを話したいと思います。

 

 

「見せるプロ」番組プロデューサー村松秀さん

僕は「女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?」を、村松秀さんの本が読みたいから手に取りました。

村松さんは、NHKで「ためしてガッテン」「すイエんサー」などの番組を手がける番組ディレクター・プロデューサーです。番組を制作するだけでなく、「環境ホルモン」という言葉を提唱し、2006年時点でベル研究所での「論文捏造」を取り上げるなどのジャーナリスト的な活動もしています。(参考:NHK 番組制作局 科学・環境番組部 ディレクター

 

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僕が村松さんに初めて出会ったのは、2014年の東工大大学院の授業「サイエンスカフェ 組織と運営」でした。サイエンスカフェとは、科学をテーマに一般の人を巻き込んむカフェイベントです。この授業は授業の形式が面白くて、講義を聞くだけではありません。10人程度の生徒が講義を通して、一つのイベントを企画・実現させます

村松さんはこの授業のゲストとしていらっしゃって、生徒が出したカフェの企画に対し、「ここはキャッチーではない」「このネタは専門性が高くて伝わらなよ」といった厳しい指摘をしていました。まさに、番組ディレクターなのだなと。「ためしてガッテン」はそうですが、役に立たなければ見るのをやめてしまう人はいるし、雑に説明するとクレームの電話が入ってきてしまうことでしょう。「提示したものが、どう見えるのか?」を考えるプロだと思いました

 

グルグルと考えるようすを見せること

僕が先日参加したイベント「科学技術社会論 夏の学校2016」で、再び村松さんの講演を聞く機会がありました。

イベントに参加する経緯としては、先ほど紹介した授業「サイエンスカフェ 組織と運営」があります。サイエンスカフェという活動は、サイエンスコミュニケーション・科学技術社会論と呼ばれる分野に属しています。それで興味を持って、文脈ゼミで科学コミュニケーション論の本を読んだんですよね。そのゼミ仲間が「科学技術社会論 夏の学校2016」 を紹介してくれたので、参加しました。

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参考:科学コミュニケーション論における欠如モデル、文脈モデルとは?

講演を聞いて思ったことは、記事として既に書いてあるのですが、似た内容を引用しましょう。(参考:リアル文脈ゼミ「科学技術社会論夏の学校2016に参加して思うこと」

ご多分に漏れず、筆者が生業にしているテレビ番組を作る仕事でも、的確な情報を適切にわかりやすく紹介することは、重要な役割の一つである。
情報番組、報道番組など、テレビは、玉石混交のさまざまな情報の中から、取材を通じて真に価値ある情報を吟味し、映像の力を最大限駆使してわかりやすく伝えていくことで、マスメディアの中でもきわめて重要なポジションを占めてきた。

そして、そこにはどんなファクトがあるのか。どんな価値ある情報があるのか。
それらの点が、放送に乗せて紹介するべきかどうかを判断する、大きなポイントにもなってきた。

だが、へそ曲がりの筆者は、「情報」「結果」「成果」「答え」といったものが、現代社会において本当にもっとも大事なことなのだろうか、という疑問を常に持ち続けてきた。本質的に大事なことは、もしや、そういうものではないのではあるまいか?
あえて筆者はそう考えて、「情報をわかりやすく提供する」という形ではない、別のテレビ番組のあり方をかねがね追究してきたところがある。

引用:女子高生アイドルが東大生を倒した武器「グルグル思考」が世界を変えていく – COURRIER JAPON

科学はプロセスとしての面が大きいのに、それは世間的にあまり注目されていない。それをすイエんサーという番組で見せてしまおう」という、一般的なものの見方に対する批判的な精神と、女子高生を使ってゆるく見せる番組を作る力、その二つが両立していて、すごいと思ったんです。一人の人間がこの二つを両立させているのが素晴らしいと思って、その考え方を知りたいと思い「女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?」を買いました。

 

 

「グルグル思考」は、答えを教えない教え方

女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?」は、すイエんサーに参加していた女の子たち(すイエんサーガールズ)が、一般的に知力の最高峰と思われている東大生とは違う知力を持っていることを説明する本です。

「1枚の紙を加工して長く対空させられるのはどっちのチーム?」「ゴム縄跳び3本を使って、できるだけ高い安定した構造物を作れ」と言ったバトルをどう乗り越えていくかというドラマも面白い。

しかも、この番組の突筆すべきルールなのだが、すイエんサーガールズたちには、台本もない。打ち合わせもない。すべてが「ガチンコ」で進行していく。つまり、彼女たち自身が自らの力だけで考え、本気で解き明かそうとリアルにチャレンジしているのである。テーマがテーマなだけに、当然、簡単に答えが見つかるはずもない。そのために、ひたすらグルグルと考え続けることになる。学校で学ぶのとはまったく異なる頭の使い方を、とことんしていくことになる。こうした、無駄にも思えるような、なんとも徒労感を伴う右往左往していく思考のことを、私たちは「グルグル思考」と呼んでいる。すイエんサーガールズは、番組のロケを通じ、絶えず「グルグル思考」し続けてきたのだ。

引用:女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?

そして、グルグル思考は、「疑う力、ずらす力、つなげる力、寄り道する力、あさっての方を向く力、広げる力、笑う力」という7つの力から成り立っていると解き明かしていきます。

僕はこの本を、学びの場の作り方、教育方法の本だと思って読みました。「科学はプロセスだ」とか、「問題設定をする力が大切だ」とかいくら言っても、その学び方は僕にはよくわかっていません。「いかに教えないで、考えなければならない状況に持ち込むか」というやり方には、巻き込んでいく学びの可能性を感じました。

最近始めた「文脈ゆるゼミ」は、答えのないことを考える場を作る試みです。いやなんというか、わからないことにみんなで向かい続けることって、大事かなと思って。

参考:問題解決する力だけでなく、問題設定する力が大切だと思う理由

参考:「文脈ゆるゼミ」を作りました。参加者募集中!

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。