どうも、木村(@kimu3_slime)です。
「数学する身体」という本を読みました。数学を通して人間にせまるエッセーです。数学を専門としていない人でも、数学者のエピソードが気になる人なら楽しい本ですね。
人間の活動としての数学
この本を書いた森田 真生(もりた まさお)さんは、1985年生まれの独立研究者です。
高校卒業後は東京大学文学部に進学し、大学卒業後はプログラマーとして働きました。職場で出会った物理学出身の友人をきっかけに、数学に興味を持ち、東京大学理学部数学科を入学・卒業後、独立。在野で研究活動を行いながら、「数学の演奏会」「大人のための数学講座」というライブ活動を行っています。
ホームページ:http://choreographlife.jp
独立研究者って珍しいですよね。僕はあまり例を知りません。数学関係だと、僕は相転移Pさん、結城浩さんを追っています。森田真生さんは名前だけ見たことがあったので、今回本が読めて良かったです。
本の内容は、数学の知識がなくても読めるもので、人間の活動としての数学を歴史順に追っていくもの。本の中ではプラトンを引いたり、ユクスキュルを引いたりして、単に数学を内側から見た数学史にとどまらないのが面白いです。
「ものを数える」から始まった数学から現代の数学まで、その移り変わりがわかりやすくまとまっています。特に、コンピュータの元となる理論を生み出したチューリング、数学における「情緒」を大切にした岡潔を特に重点を置いて紹介していますね。
岡潔が「情緒」という言葉を好んで使った背景にはそれなりの理由があった。心には本来、「彩りや輝きが動き」がある。ところが、「心」という言葉はあまりにも使い古されてしまっていて、そのままでは「何だか墨絵のような感じ」を受ける。そこで、彩りや輝き、動きをもっと直截に喚起する言葉として「情緒」という表現を使うのだと、エッセイの中で繰り返し説明している。
「情緒」は「情」の「緒(いとぐち)」と書く。「情」と書いて「こころ」と読ませることもあるが、「情」という日本語には独特のニュアンスがある。
情が移る、情が湧く、あるいは情が通い合う。情はいとも容易く「私」の手元を離れてしまう。「私(ego)」に固着した「心(mind)」とは違い、それは自在に、自他の壁をすり抜けていく。
引用:数学する身体
日本図書センター
売り上げランキング: 11,361
「数学する身体」を読んで思うのは、数学を大学で専門的に学んだことのない人であっても、数学出身の人が書いた文章・エッセーを読んでみると面白いよということです。
数学は歴史の中で抽象化・厳密化されてきましたが、人が思いを馳せる活動のひとつであることに変わりはありません。
僕が読んだ数学者についての話だと、志賀「数と量の出会い」、アダマール「数学における発明の心理」、ポアンカレ「科学と方法」、星野「甦るチューリング」あたりが読みやすく面白かったです。
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 202,384
岩波書店
売り上げランキング: 34,666
NTT出版
売り上げランキング: 758,529
数学者をテーマにした映画なら、「ビューティフル・マインド」、「博士の愛した数式 」あたりがおすすめ。
ビューティフル・マインド: 天才数学者の絶望と奇跡 (新潮文庫)
新潮社 (2013-10-28)
売り上げランキング: 122,022
売り上げランキング: 15,941
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(吹替版)
売り上げランキング: 2,580
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
関連記事
参考:数学を志す人のための本「志学数学」に教えてもらった、本をじっくり考えながら読む楽しさ
参考:文脈ラジオ第25回 教育学部・理学部のふたりが数学教育を本音で語る(前編) ゲスト:keitaさん
参考:文脈ラジオ第26回 教育学部・理学部のふたりが数学教育を本音で語る(後編) ゲスト:keitaさん
参考:アナタドウ?ラジオ第8回 「数学は何の役に立つ?」数学系大学院生2人が語る(1/2) ゲスト:永原健大郎さん