どうも、木村(@kimu3_slime)です。
グロティウス「戦争と平和の法」を読みました。
彼は国際法や自然法の父として歴史の教科書で紹介されますが、その割に原著が手に入れにくいんですね。Amazonでは品薄、近所の図書館にはおいていない。
ウェブ上を調べてみると、帝京大学の渕 倫彦さんが序論と第1章を翻訳して公開していたので、そちらを読みました。ありがたいですね。
さて本を読もうと思ったきっかけですが、ルソー「社会契約論 」にピンとこなかったので、前回はプラトンの「法律」を読み、続いてその間の年代で法律について論じたグロティウスに当たろうというものです。
読んでみて面白かった部分である、「法律は、社会的なつながりを守るためにある」、自然法と諸国民の法の区別の話をしようと思います。
法律は、社会的なつながりを守るためにある
グロティウスは1583年、オランダに生まれました。
当時のオランダはスペインによって支配されていて、そこから独立しようとするために戦争が80年に渡って行われていたんですね。
その背景が、たとえ戦争状態にあっても守られる法がある、国家が友好関係を築くために正義や法を大切にしよう、という主張につながっていったのではないでしょうか。
グロティウスはまず、「人間は自然な状態では自らの利益を追求する、したがって正義には意味がない」という主張に反対します。
人間には、社会的なつながりへの欲求、共同生活への欲求が備わっている、と考えるのです。それが人間の本性であると。
他の動物と人間を隔てるこの社会的なつながりを大切にする行動は、現代からすれば当たり前かもしれませんが、それを法律の原則として認識するのは当たり前でないと思います。
人間は、他の動物にまさって、すでにわれわれが述べたような社会的[結合の]力をもっているだけでなく、判断力ももっており、これによって、現在ばかりか将来のことがらについても、なにが有益でありなにが有害であるか、いかなるものがそのいずれの結果を導き うるかを査定することができるからである。人間の本性に合致するとは、こういったことについても、人間知性のありように応じて正しく形成された判断に従い、恐怖や目前の快楽の誘惑によって堕落させられないこと、あるいは無分別な衝動に駆られないことである。したがって、そのような判断と明白に矛盾することは、自然の法すなわち人間本性の法にも反している、ということがわかる。
引用:戦争と平和の法 p.269
社会的につながる力を利用して生活すること、知性にもとづいて行動すること、これを人間本性の法、自然の法(自然法)と呼びました。
自然法という言葉を最初に聞いたときにはピンと来ませんでしたが、人間本性の法と言えばわかりやすいですね。
その具体例としては、他人のもの・財産を侵害しないこと、害をなす人以外に害を加えないこと、借りたものは返すこと、約束を守ることなど。
これもまた至極当たり前のことを言っているわけですが、その当たり前を鮮明に捉えていることがすごいと思います。
人間の本性・精神とはどのようなものか、その問いは、信仰の自由や啓蒙思想、人権思想につながっていきそうですね。
自然法と諸国民の法を区別する
グロティウスは、法律学を体系的な学問にするために、自然法と諸国民の法の区別を訴えました。
さきほど紹介したように、自然法は、自然な状態の人間から生まれてくる原則のこと。
そうではなく、ある特定の人々の間でなされた合意を、諸国民の法と呼びました。
従来十分に配慮されていなかったこと、すなわち定立されたことに由来するものと、自然に由来するものとを正しく分離しない限り、達成することができないのであ る。なぜなら、自然的なものは常に同一であり、容易に一つ の[体系的な]学問 ars にまとめることができるのに対して、 定立されたことに由来するものは、しばしば変化させられ、 また場所によって異なっているために、その他の個別のことがらに関する観念と同じく、[体系的な]学問の外に置かれているからである。
引用:戦争と平和の法 p.287
自然に由来する法律と、土地や時代によって変わる諸国民の法律を見分けることで、法律をより体系的に整理する。
このような分類があると、何が万人に共通する法律で、何がその土地ローカルの法律にすぎないのか、見分けていきたくなりますね。
ルソー「社会契約論」や啓蒙思想の文脈で、なぜ「自由」を訴えているのか、自由とは何かがよくわからなかったのですが、自然権の考え方を理解するとわかってきた気がします。
自由を、人間の本性、自然な状態を取り戻していることと捉えればのみ込めるんですよね。しかも、それには国や宗教も関係ないと。
次は、ホッブス「リヴァイアサン」を読んでみたくなりました。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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