ネットのごく一部で流行っている言葉や画像(ミーム)を解説するウェブサイト

脳=究極のVR装置! 「VRと知覚心理学入門」を読む

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

バーチャルYouTuberのブームをきっかけに、GOROmanさんの「ミライのつくり方」などVR(バーチャルリアリティ)関係の本を読んでいます。

VRについて集積されてきた知識は、VRビジネス・コンテンツ方面と、VR研究の方面があると思っていて、GOROmanさんの方はどちらかというと前者です。

で、今回紹介する「だまされる脳―バーチャルリアリティと知覚心理学入門」は、VRに関連する研究の本

人間の認知、心理学、脳科学×VR」という領域への入門書として最適と言えるでしょう。ブルーバックスということもあって読みやすいですね。

 

VRは脳のハッキングである

本書ではVRを、脳をだまし人工の現実を見せること、心(mind)のハッキングとして捉えています。

ヘッドマウントディスプレイという装置が擬似現実を起こしているのではなく、最終的にはたった約1.5kgの脳が外部情報を読み取って「現実」を生み出している、ということ。

物理的な波である「光」や「音」は、それを人間が認識するから光や音として感じられるし、棘の「痛み」や砂糖の「甘味」が人間が変換を行って感じれるもの。

つまり、今生きているこの日常・現実を生み出している脳・心こそが究極のVR装置だ。(だからその脳を研究しよう、というモチベーションでVR心理学の研究を行っている人たちが書いた本です。)

 

本書では錯視や錯覚、カクテルパーティ効果のような音声認識、高所恐怖症の克服と空間認識など、VR機器を使った知覚心理学の研究紹介が多いです。

読み始める前は、なんでこんなに脳や心のことを基礎から調べようとしているのか、脳科学・心理学的な興味からしかVRに興味がないのかな……と疑問で、「脳・心すげえ!」と思ってる人しか興味持てなくないか、と思っていました。

しかし読み終えてみると、僕の自分の生活は脳によって生み出されている(=物理的現実に対して脳によって瞬時に高度な解釈が行なわれている)のはその通り。

VR技術の可能性を広げる一つの方向性として人間の脳の研究がある、と頭の中で整理がついた瞬間に、知覚の研究×VRって相互に良い関係性だなと気づけました。

 

本書の構成は以下のようになっています。

1章 脳とバーチャルリアリティ

2章 脳のだまし方

2-1 三次元の不思議

2-2 動かされる自分

2-3 音はどこから?

2-4 どのようにして形を知るのか

2-5 小さくなっても背が高い?

3章 バーチャルリアリティ技術への応用

3-1 脳をだますための最新技術

3-2 空間を認知する

3-3 VRの心理療法への応用

3-4 バーチャルリアリティを利用した作業

3-5 VRトレーニング – 脳と身体を鍛える

4章 究極のバーチャルリアリティ

 

本書は2006年に書かれた本で、個人をだますスタンドアローンのVR、インターネット技術・コミュニケーションとVRといった話がとても薄いです。(本書に限らずVRについての語りは個人の枠にとどまるものが多い印象です)

ただし、人間の認識・知覚心理学・VR心理学というテーマ・研究結果は普遍的なもので、時間が経っても古びることがない根本的な話です。

VRと学問を結びつけて語る上で、まずここをおさえられて良かったと思っています。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 

ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ (星海社新書)
GOROman(近藤義仁) 西田 宗千佳
講談社
売り上げランキング: 746

こちらもおすすめ

バーチャルYouTuber文化論 【最新版】なぜブームに? 理由を徹底解説!

心理学の用語スキーマとは何か? ピアジェに学ぶ認知発達の科学

思考のパターンを変えれば、不安は和らげられる「認知行動療法」

感情と思考、どちらが未発達? ユング「分析心理学」を読む