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グループも人と同じように成長する 「集団社会化」とは

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

唐沢かおり編「社会心理学」を読みました。

最近、社会学が面白いなー、ベースを身に着けたいなと思っていて手にとった本ですが、あくまで社会「心理学」という切り口で、僕の興味を惹くトピックが思ったより少なかったです。

研究トピックが個別にたくさんあるのはわかるのですが、全体としてのインパクトが弱いと感じてしまいました。

かといって、興味深いトピックがないわけではありません。僕が興味を持ったトピックである集団過程・集団社会化の話をしましょう。

 

集団社会化とは

人の集まり、すなわち集団(グループ)のふるまいを研究するのは、社会心理学の主要なトピックのうちのひとつ。

面白かったのが、集団の社会化(group socialization)という概念。

社会化というのは、人が社会の価値基準を学んでいく、社会に順応していくことを指した発達心理学の言葉。

人が成長して変わっていくように、人のグループもグループ外から何かを学び成長していく……それが集団社会化の話です。

インターネットが大衆化してさまざまなグループ・コミュニティが生産される現在において、めちゃくちゃ当てはまりそうなトピックじゃないですか。

 

さて、集団社会化の有名なモデルが、モーランドとレヴィーンによって1982年に提示されています。

彼らによると、集団社会化を構成する要素は3つ。1.評価、2.コミットメント、3.役割の推移

評価とは、個人と集団双方が利益を求めるという原則。個人は自分に合ったグループを探すし、集団もその目的にあったメンバーを探しますよね。

コミットメントは、個人と集団それぞれが評価の程度に応じてどれだけ貢献するかという度合いのこと。僕なら価値提供という言葉を使いますかね。

役割の推移、これが重要かつ面白い話。集団にとっての個人の位置付けは、時間とともに変化する。次の図のように。

画像引用:社会心理学 p146

メンバーでないときはコミットメントが少なく、正規のメンバーになるにつれコミットメントが求められる。このモデルでは、集団への適応だけでなく、フェードアウトも提示されている点が現実的だと思いました。例えばマーケティングの文脈で話すとしたら、図の前半部分までしか示されなそうです(偏見かもしれませんが)。

 

この分析から読み取れる面白いことは、役割の推移は、メンバー(成員)の組織内での地位として具体化されるとは限らないということ。

メンバーかメンバーでないかという区分は、明確であることが多いです。しかし、会員/正会員という図式や、新参・中堅・ベテランといった区分は、グループによってまちまち。規模の小さなグループであるほど、役割の区分は不明瞭になることがわかります。さらにそのとき、正式なメンバーに求められる役割割当の責任は大きいです。

また、趣味のコミュニティやネット上のコミュニティでは、メンバーかメンバーでないかという区分ですら曖昧な集団ができあがります。図では加入から脱退まで点線が引かれていますが、この点線がおだやかなものの、グラデーションとして機能することでしょう。

ただしこの図式で疑問な点は、時間経過とともに常に左から右へ進むものなのか、ということ。役割の推移は、急激な環境の変化によってステップを飛ばすこともある、という話は指摘されていました。見ている限りは、周辺成員になったメンバーが元成員になることなく、モチベーションが戻って再び正式成員となるパターンもあると思うんですよね。というわけで、これは1つのモデルケースであり、実際の個人のモデルはこの形を複数重ねた山あり谷ありの形となっていることでしょう。

 

本書では詳しく述べられてはいませんでしたが、集団社会化、役割の推移とともなって、価値観や信念が強化されたり維持されたりすることは起こりそうです。

また、これは個人と単一のグループとの関係性の話。あるグループと他のグループとの関係性も気になりますね。例えば、グループ内で築かれてきた規範が、大きな時代の変化・社会のベースとなる価値観の変化に適応するか反発するか、このモデルをベースに考えることもできそうです。

社会心理学」全体への興味は持てませんでしたが、集団の性質を調べる学問というのは面白いし役立つと思うので、もっと勉強していきたいと思います。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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