どうも、すらいむ @oily_slime です。
不確実な状況に対応するコミュニケーション
聞いてください。10月6日に接近した台風に際して、大学事務による学生・教職員への連絡があまり良くなかったんです。あ、ぼくは大学院生です。
まず、台風接近の前日(5日)に、”10月6日(月)は身の安全に気をつけて登下校してください。”というメールが届いたんです。あれ、台風が来るんじゃないの?まるで、休講の可能性を検討していないように見えますね。
そして、台風接近当日(6日)。朝、ずっと学校側からのメールを待っていたんですけど、一向にきません。1限は9時からです。通学時間を込めて、7時くらいにはメールがくるものだと思っていました。そのまま家で Twitter を見ていたら、何か午前中の授業は休講らしいという情報が回ってきます。
— 15分話した、10分耐えた (@_korin_rin) October 5, 2014
8時50分時点での張り出しでの連絡を、現地に居た学生さんが撮った写真です。このタイミングでは、通学に2時間かかる人は間に合いませんね。そして、9時半ごろに、ようやく当日初のメールが届きます。張り出しからメールまでに30分かかっているのは、何故なのでしょうか。気になりますね。
これだけの状況となると、Twitter ではいろいろな学生が反応して。大学事務の対応についての学生のつぶやきをまとめた、Togetterもつくられました。湘南ペンギン(@shonanpen)さんによる、東工大教務課の台風対応。不満が噴出していますね。
大学事務の方々も、大変だったとは思うんです。けど、学生と教職員を合わせて、少なくとも5000人は関係している状況ですからね。もう少し工夫できたほうが良いのではないかと思います。
ということで、今回は、コミュニケーションデザインの視点から、大学事務がどう対応しておけば良かったかの一例を提示していきます。
目的を達成するためのコミュニケーションデザイン
まずは、コミュニケーションデザインとは何かということから説明しますね。
台風がいつくるかわからない状況で、大学事務、教職員、学生が協力して動くのは難しいことです。台風がくるという問題意識は共有していても、休講するかどうかの判断は勝手に共有されるわけではありません。いろいろな人が関わるプロジェクトは、勝手には進みませんよね。やることを明確にしたり、話し合いをしたり、期限を設定したりして、ようやく進みます。
誰かが意識してコミュニケーションをデザインしていない限り、コミュニケーションは失敗します。大学事務が、1限開始後になってから、1限休講のメール連絡をするというように。これは避けたい。「なんとなくうまくいくだろう」という状態から脱したいですね。
そこで、「こうやれば全員が問題を把握して行動できて、目標達成できるよね」という実践的な計画を立てるための考え方が必要になります。その考え方がコミュニケーションデザインです。コミュニケーションデザインとは、問題の全体を、人と人との相互のやりとりによって、管理できるようにしていくことです。
デザインをすればいいとわかったとしても、実際何をどう考えていけばよいのかがわからなければ、意味がありませんね。より具体的には、次のようなサイクルを使って、コミュニケーションデザインを考えます。
何のためにという「目的」を明確にし、誰にどうなってほしいのか、誰と一緒にどうなりたいのかの「計画」を立てて、そのための方法を考えて「実践」し、結果を観察して「考察」する。目的が達成できていなければ目的にフィードバックして、新たな課題を設定する。
G 何のために
P 誰にどうなってほしいか 誰といっしょにどうなりたいか
I 方法を考案して実践
O 目標を達成できたか 次に何をするべきなのか
このサイクルを、目的 Goal、計画 Plan、実践 Implement、考察 Observation の頭文字を取って、GPIOサイクルと呼びます。
最も考えることが難しく、かつ重要なことは目的 Goal をはっきりとさせることです。ここがはっきりしていないと、計画や実践を通して、何を共有したいのかが曖昧になってしまいます。
大学事務がどう対応しておけば良かったかの一例をGPIOサイクルで提示する
今回の大学事務の対応について、コミュニケーションデザインの視点からどうすれば良かったかを考えてみました。
G(目的) 学生、教職員が、無駄足を踏まないようにする。
P(計画) 学校へ向けて動き出さなければならなくなる時間までに、休講にするかどうかの判断を伝える。
I(実践) 大学事務側で、どのタイミングでメールを流すのか、前日から当日までのタイムスケジュールをつくり、共有する。当日、大学職員が集まれない時の判断方法を決める。メールを流す範囲、伝達する順序を確認。学生、教職員の家からの最低移動時間を見積もり、休講にする条件を明確にしておく。大学事務側の現在の判断状況をウェブページで公開し、誰もがいつでも見れるようにする。休講になったけれど学校に来てしまった人に向けて、台風をしのげる場所を準備しておく。
O(考察) メールとネットでの連絡はうまくいったか。
おわりに
僕は、大学に関わる人々が、雨の中大変な思いをして無駄な移動をすることを避けられたらなと思って、この記事を書きました。そして、大学事務の人々が、よりよいコミュニケーションを主体的に行えるようにするための、一つの案を示しました。関係者のみなさんの参考になれば幸いです。
僕は、コミュニケーションデザインについての話を、この本で学びました。”人の間で意味を共有するために、目的をはっきりさせよう”ということが、この本の一つの主張です。事例も身近で、初めての方でも読めると思います。原子力発電所の住民への説明、技術者のジレンマ、上司からのハラスメントへの対応、オレオレ詐欺などなど。異なるバックグラウンドをもつ人の間でのコミュニケーションをどう考えればよいかが気になる方は、是非読んでみてはいかがでしょうか。
あなたの反応をお待ちしております。すらいむ @oily_slime でした。では。