理性をうまく使え。すべての学問の父ルネ・デカルト「方法序説」を読む

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どうも、木村(@kimu3_slime)です。

山田 弘明「『方法序説』を読む―若きデカルトの生と思想」を読みました。

デカルトと言えば、「我思う、ゆえに我あり。」という主張や、物理や数学で使われるデカルト座標という概念は有名ではないでしょうか。

実は、彼はすべての学問の父なのです。真実を見つけるための画期的な方法を生み出しました。その重要さがもっと知られてほしいと思い、この本を紹介します。

 

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デカルト「方法序説」はなぜ重要か

僕が本を読んだきっかけは、経済学の父アダム・スミスが、デカルトの影響を受けていると知ったから。

参考:経済学はなぜ生まれたか「アダム・スミス『国富論』を読む」

なんと、近代の経済学や物理学の「シンプルな仮定から全ての法則を導く」というスタイルを提唱したのがデカルトなのです。近代学問すべての父と言っていいのではないでしょうか。

彼の主著である「方法序説」は、学校の勉強で聞いたことがある人もいるでしょう。タイトルは有名ですよね。

でも、漢字4文字だし、なんか難しそう。それが僕のデカルト「方法序説」に対する印象でした。

しかし、アダム・スミスの経済学やニュートンの物理学と関係があるなら知りたいと思い、「『方法序説』を読む―若きデカルトの生と思想」を読んだら……めちゃ面白いやん!

大学生・学ぶことが好きな人は全員読むべきです。「べき」というのは、哲学関連の本の中ではかなり読みやすく、どんな学問をする人にも通用する話だからなんですよね。

 

理性を使い、すべての学問において真理を見つけるための「方法序説」

驚くべきことに、「方法序説」は教科書のようなスタイルでは書かれていません。むしろ彼個人の人生体験談になっているのです。だから読みやすい。

彼は、自分がいかに生きるべきかを問い続けました。大学の勉強に満足できず、世界を旅しながら考え続け、その果てに思いついたことを記した文章が「方法序説」です。

きちんとしたタイトルは、「人の理性を正しく導き、諸学問において真理を探求するための方法序説」です。理性を使い、真理を追究する方法こそが重要だ。それがメインの主張です。

彼は「三試論」として、屈折光学・気象学・幾何学の三つの学問における真理を発見しようとしました。それは、方法序説の提唱する新たな方法を試すための論です。

 

デカルトの提唱する「4つの規則」

デカルトは、すべての学問の基礎となる普遍学・形而上学を築くための方法を考えていました。

そして、当時最も基礎がしっかりとしていた学問である論理学や数学の方法の長所を生かし、新たな方法を提唱しました。それはたった4つの規則に従うことです。

第一は、私が明証的に真であると認めるのでなければ、どんなものも真として受け入れないことであった。すなわち、注意深く速断と偏見とを避けること、そして私の精神にきわめて明晰且つ判明に示され、疑いを容れる余地のまったくないもの以外は、私の判断の中に取り入れないこと。

第二は、私が吟味する諸問題のおのおのを、できるかぎり多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分けること。

第三に、私の思想を順序にしたがって導くこと。最も単純で最も認識しやすいものから始めて、少しずつ階段を踏むように登ってゆき、最後に最も複雑なものの認識にいたること。そして自然のままではあと先のないものの間にも、順序を想定して進むこと。

最後に、私が何も見落とさなかったと確信できるほど、完全な枚挙と全体的な見直しを全体にわたって行うこと。

それぞれの規則を短く言うならば、明証性の規則分析の規則綜合の規則枚挙の規則でしょう。

これらの規則のうち、問題を分けて考える分析の規則、すべての議論をまとめ上げる枚挙の規則は、ギリシャの学問(ソクラテスやアリストテレス)の頃から知られていた内容に近いと思います。

参考:ゴルギアス・ソクラテスの対話に学ぶ、哲学的問答・議論の基本的な態度とは?内容の良し悪しに関係ない、説得する技術 アリストテレス「弁論術」

注目すべきは、明証性の規則と分析の規則でしょう。

すぐさまに明らかなものでなければ、判断に使わない。つまり、すぐさまに明らかな事実を最初に使って考える

そして、それを使って徐々に認識しやすいものを把握し、最後に最も複雑なものを認識する

これがニュートンやアリストテレスが採用した方法であり、彼らが近代の物理学・経済学を築くことができた所以です。

 

「私は考える、ゆえに私はある」から形而上学を出発する

そして、デカルトは上で述べた方法を使い形而上学・哲学を築きました。

形而上学というとなんだか難しい響きですが、形あるもの・感覚や経験を超えた世界の学問です。英語では、metaphysics(メタ物理学)と書きますね。物理学を含む自然科学の基礎となる、確かなものはなんでしょうか?

感覚や直観は、時として真実を捉えない。数学・幾何学などの単純なことがらについても、推論を間違ってしまうことがある。夢の中の出来事は、あたかもその中では真実であるかのように思えるけど、起きたらありえないことだと気づく。つまり、自ら考え想像することだって、夢の中の幻想と同じくらい信用できない。

でも……

すべてを偽りかもしれないと考えているときであっても、そう考えている自分は必然的に存在するのではないか。これが、「私は考える、ゆえに私はある(cogito ergo sum コギト・エルゴ・スム)」です。デカルトは、この原理を哲学の第一原理として採用しました。コギト命題とも呼ばれますね。

この命題の内容が重要というよりも、この命題を使って、他の形而上学や自然科学の命題を導いていく。これが方法に則ったやり方です。

この命題は、「考えるためには、存在しなければない」と一般化されます。そして、(真理を真理として成立させている存在である)神が存在しなければ、完全な真実は存在しないだろうと考え、コギト命題を使って神の存在証明、精神の存在証明をします

「真実は神に由来する、神は真実の源泉である」という考え方は、現代の日本を生きる僕らにはやや奇妙なものに思えるかもしれません。詳しくは本を読んでください。

 

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自然科学のラフスケッチ「世界論」

デカルトは、形而上学の基礎を築いたあとに、「世界論」を述べました。「世界はこうなっていますよ」という論。これは、のちの自然科学と呼ばれるもののラフスケッチです。

まず、神が物質を作った。そして、その物質には運動が与えられた。これが根本です。

そうして混沌とした状態が起こり、惑星、恒星、天体ができていった。重さや光も生まれた。地球には山や海ができて、動物や植物などの生命が生まれていった。

神は、最初に物質を作って運動を与えたあとは、自然法則を作ってそれがいつも通り機能するようにしておくだけで、僕たちが今見ているような世界ができあがる。

この内容は、確かにのちにニュートンの物理学を生み出すような内容で、現代における物理空間のでき方の認識とも大枠は食い違っていないですね。

このような世界論・自然科学は、数学的・機械的自然学と呼ばれます。「形を持った観念(実体的形相)が自然を作っている」とするアリストテレス、スコラ哲学の学問と対比されますね。

デカルトはこの「世界論」を、確からしく思える仮説・寓話として提唱しています。つまり、確かめなければならないものと考えました。

個々の物事と一般的な法則との関係は、ものすごくたくさんの数の実験が必要となる。それは、一人の人間では時間・資金的に不可能だ。だから、実験の結果を公開して、共同で研究を行おう

現代の大学における研究では当たり前になっている共同研究の考え方も、デカルトによって提唱されたものなんですね。

 

デカルトは「方法序説」で、

  • すべての学問の基礎をもたらす普遍学を作ろうとし、
  • みんなで学問をやろうと呼びかけました。

この記事で紹介した話題は自然科学がメインでしたが、デカルトが提唱した人間自らの存在に関わる問題は、のちに哲学、脳科学、心理学に大きな影響を与えています。今でも、人工知能との関連で「人間と機械の違いは何か?」という問題は聞きますよね。

デカルトの主張がすべて正しいものだとは思いませんし、後になってたくさんの人に批判された考え方でもあります。ライプニッツ、ヒューム、カントあたりが有名でしょうか。

それだけ批判されるということは、それだけ基礎となるポイントを指摘した内容であったということでしょう。「『方法序説』を読む―若きデカルトの生と思想」、解説つきで読みやすいので、ぜひ読んでみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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