どうも、木村(@kimu3_slime)です。
世界の名著〈58〉デュルケーム,ジンメルに収録されているジンメル 「社会的分化論」を読みました。
デュルケーム、ウェーバー、ジンメルは近代社会学の基礎を築いた人と呼ばれているので、一度は読みたいと思ったのですが、正直ジンメルはかなり読みにくかったです。
デュルケームの社会学は、まず観察された事実を持ってきて、それがどのような原因から起こったか考察と分析を加えるというスタイルです。実証的・科学的で読みやすいんですよね。
ジンメルは、具体例は持ってくるのですが、それは話のテーマ・連想をわかりやすくための例であることが多いです。
章の中でまず何を論じたいのかが宣言されず、主張・ゴール・結論がつかみにくい。
社会学というよりは、社会を題材とした哲学の本、社会哲学だと思えば納得できるのですが……。
後に著された「社会学の根本問題」なら、もう少し整理されているのでしょうか。
とはいえ、個人と集団の関係、人々の相互作用に注目した考え方は基礎的で重要だと思ったし、面白かったので、それに触れようと思います。
「社会」は、相互関係をもった集団だ
ジンメルは、社会・社会学をどのように認識していたのでしょうか。
「生物は原子からできているから原子を論じることにだけ意味がある」という主張が無意味なのと同様に、「社会は個人からできているから個人を分析すれば良い」という個人還元主義を否定します。
そして、「(生物のように)その各部分に相互作用が存在するような存在を、客観的な単一体」と考えます。これがジンメルの第一原理・出発点です。
これにもとづけば、社会はその各部分で個人が相互作用しているので、ひとつの観察対象として認められるというわけですね。
もう少し厳密に言えば、「社会とは、人々の間で相互作用があって、それが個々のメンバーからある程度独立した状態になっている集団だ」とジンメルは定義しました。
これには納得です。例えば、文化的なサークルは、そこで定期的に行われていることや、伝統が、構成員に関係なく維持されるようになっていますよね。家族や会社も同じように当てはまります。
個性的な集団になるほど、そのメンバーは没個性的になる
相互関係に注目した分析の例として、第3章「集団の拡大と個性の発達」の話が面白かったので触れてみます。
ジンメルは、集団が個性的になればなるほど、そのメンバーは個別的ではなくなっていくと主張します。
どんな人間についても、他の事情に変化がなければ、個人的なものと社会的なものとのあいだには、その形式こそ変化するが、つねに不変の均衡が存在する。というのは、われわれが属す圏が狭ければ、われわれのもつ個性の自由はそれだけ小さくなるが、そのかわり、圏が狭いためにかえってそれ以外の圏から区別されることになるからである。
引用:p.427 世界の名著〈58〉デュルケーム,ジンメル
これを説明する例として、ピューリタンの一派であるクエーカー(震える者)を挙げています。
彼らの間では、礼拝のときに各個人が説教者となって自分が欲することを語ることができます。一方で、結婚のような個人的な問題は、教団が監視していて、その同意なしには行えないのです。
クエーカーの間で共同のことのみ自由であって、個人的なことは共同のことに束ねられてしまうのです。
逆に、もしこういうグループが大きくなったとしたら、個人的なことは自由になりますが、そうするとグループとしての個性・自由がなくなってしまいます。
これと同じように、生活形式が単一的であればあるほどそのメンバーの個性ははっきりとするし、無法な集団による乱行は一人の真似をする傾向があるという例も指摘されていますね。
個人としての自由を手に入れようとすれば、集団としての自由は犠牲になる。逆に、集団としての自由を優先すれば、個人としれのそれは失われる。個人と集団が持つ自由の総和は一定で、トレードオフの関係にあるというわけです。
これは面白い指摘だと思いました。
インターネットのコミュニティでもそうですよね。ユーザーが自由にやっていいコミュニティだと、グループとして目立たなくなってしまう。
逆に、悪名高い集団だと、その活動は目立ちますが、各個人はその内部のノリに合わせなければならず、自由がない。
本のタイトルに含まれる「分化」は、differの訳語です。差異化と言ったほうがわかりやすいのはないでしょうか。
個人の分化と、集団が大きくなることは両立しません。
そのことを踏まえ、自分に必要な個性を見極めて、それに合った集団に属したいものですね。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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