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「ハードからソフトのプログラムへ」コンピュータの基礎・ノイマン型コンピュータとは?

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

スマホ・パソコン・インターネットは、ここ100年の世界を大きく変えてきました。このブログも、その恩恵によって作られたものと言えます。

さてそれが形になっているのは、コンピュータというものを誰かが生み出したからです。

前回は、コンピュータの原型となる仮想の機械チューリングマシンを紹介しました。

今回は、それを具体的な機械にしたフォン・ノイマンおよびノイマン型コンピュータの特徴を紹介しようと思います。

 

フォン・ノイマンとは

John von Neumann in front of the Institute for Advanced Study computer, Princeton, New Jersey (George Dyson collection)

画像引用:Thomas Gotchy – flicker

フォン・ノイマン1903年、ハンガリーに生まれました。ユダヤ系の家系で、数学や科学全般でめきめき頭角を表す。のちにアメリカで研究活動をし、数学者、物理学車、コンピュータ科学者として知られるようになります。

ものすごく計算が早く、悪魔の頭脳を持つ男とも呼ばれます。コンピュータができたときには、「俺の次に計算の速いやつができた」とジョークを言ったそう。

原爆開発に携わったこともあってか、映画「博士の異常な愛情」のマッドサイエンティストのモデルになったとも言われています。(面白い映画ですが、ノイマン自身とはあんまり関係ないです)

参考:戦争に飲み込まれた科学者の好奇心 マンハッタン計画と原子爆弾

 

ノイマン型コンピュータとはなにか

さて、ノイマン型コンピュータの話をしましょう。

ノイマン型というとなんだか難しく聞こえるかもしれませんが、あとで説明するように記憶装置をもったコンピュータのことです。

前回、チューリングマシンの話をしました。テープとスキャナーと命令書(メモリ、CPU、プログラム)があれば、なんでも計算できる機械ができる、という話でした。

問題は、それをどうやって実現するかですチューリングマシンをすぐれた形で見事に実現したのが、ノイマン型コンピュータなのです。

ノイマン型コンピュータは、1945年ノイマンの論文「First Draft of a Report on the EDVAC(EDVACの報告書・素案)」によって発表されましたEDVAC(エドヴァック)というコンピュータの名前ですね。この機械自体は1951年に完成します。

(ちなみに、ノイマンの名前をとっていますが、アイデア自体はモークリーとエッカートによるもので、ノイマンは助言役であったと言われています。また、ノイマン型以前にも同様のコンピュータはあったようです。とはいえ、ノイマンの功績は広く知られているので、ノイマンを軸に紹介していきます。参考:ノイマン型 – Wikipedia

 

ノイマン型以前のコンピュータとは?

ノイマン型」とはなんでしょうか。これは、ノイマン型ではないコンピュータと比べることでわかりやすくなるでしょう。

 

世界で最初の大型電子計算機ENIAC(エニアック)は、1946年に開発されました。

画像引用:U.S. Army Photo – Wikipedia

写真を見ると、大量に配線・コードがつながれているのがわかりますね。

ENIACにおいては、プログラムは物理的に与えるものでした。

配線、プラグの差し替えを行うことで、コンピュータに与える問題を変化させたのです。これはプラグ方式と呼ばれます。

また、ドイツのコンピュータ「ツーゼZ3」は、それよりも柔軟にプログラムを与えることができました。

穴開きテープを入力装置に読み込ませることでプログラムを変更できるので、この方式はテープ制御と呼ばれています。

とはいえ、プラグ方式・テープ制御いずれもハードとしてプログラムを作ろうとしていたわけです。問題をいちいち物理的に実現しなければならなかった。

 

ノイマン型=記憶装置型

私たちが使っているコンピュータでは、そんなことはしなくて済むようになっています。キーボードを使ってプログラムを打ち込み、記憶装置に保存させればいいのです。

そう、この発想がノイマン型コンピュータなのです

これらに対して「符号化したプログラムを、記憶装置内に蓄える」、本書の用語では「記憶装置による制御」は、柔軟性と高速性が同時に実現できる、画期的な方式であった。

引用:計算機と脳

ノイマン型というのは、このようにプログラムを記憶装置に入力できることを指しています。プログラムの形が、ハードからソフトになったわけです。

個人名を避けて「プログラム内蔵方式」と呼ぶこともあったが、短い名前には勝てないらしく、今はほとんどの人(反対する人もいるが)「ノイマン方式」と呼んでいる。

引用:計算機と脳

自由に問題を与えて、何度でも計算させることができる。

ここまで揃ってしまえば、もうほとんど現代のコンピュータと同じですね。

 

チューリングはなんでも計算できる機械のアイデアを生み出し、ノイマンはなんでもプログラムできる機械を現実のものにしました。

こうしてコンピュータの基礎はできあがったわけです。

とはいえ、現代に大きく影響を与えているのは、コンピュータ単体ではなく、それがインターネット・ウェブと組み合わさったからではないでしょうか。

次回は、ワールドワイドウェブの生みの親であるティム・バーナーズ=リーの話をしようかなと思います。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

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