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哲学は本を読むだけではダメだ – 中島義道「哲学塾授業」を読む

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

中島義道「哲学塾授業 難解書物の読み解き方」を読みました。

デカルトの「方法序説」を読んで、理性を使って真理を捉えようとする方法が面白かったので、デカルトの「まわり」のことを知りたかったんですよね。

そんなときにたまたま図書館で見かけたのが、「哲学塾授業 難解書物の読み解き方」でした。

ロック・カント・ベルクソン・ニーチェ・キルケゴール・サルトルなど、デカルト批判から出発する哲学者の著書を、「哲学塾カント」のメンバーと読み解くという内容なのですが……正直、その内容のほとんどはわかりませんでした。

でも、中島さんの文章は哲学に対する姿勢を考えるのに役に立つので、そのことについて詳しく書いてみます。

 

なぜ哲学を学ぶのか?

僕はそもそも、中島さんの著書「不幸論」「「対話」のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの」を読んでいます。わりと攻撃的なタッチで、クセがあるんですよねえ。ピリ辛。

参考:僕らは『「対話」のない社会』を生きている

東洋経済オンラインに載せている文章は無料なので、ぜひ読んでみてください。中島さんなりの哲学論が広げられています。

特に、中島さんの半生を交えた「どうせ死んでしまうが、もっと迷え、悩め!」がわかりやすくておすすめ。

彼は「哲学は反社会・非社会的営み」と考えています。つまり、何の役にも立たないのです。「ハーバード大学哲学講義」などで知られるマイケル・サンデル教授が語っている「哲学」は、ニセ哲学であるとも言っていますね。

さらに、「哲学塾授業 難解書物の読み解き方」で扱っているのは、「ギリシャ・ローマという限られた地域で芽生えた思想(西洋哲学)に過ぎない」とも言っています。

じゃあ、なぜ西洋哲学を学ぶ必要があるのか。それには、「普遍を求める」態度のモデルになるからと答えています。西洋哲学独特の臭みを自覚できるようにして、考える基盤にするためだと。

これには僕も納得しました。

人間が思いつく問いのうち、最も根本的で、真偽すらはっきりしないことを考えたいから、哲学書を読むのだなと。

僕がデカルトの思想を気に入ったのも、彼がありとあらゆることを、自らの基準を持って理解しようとする普遍性があったから。そして、彼の考え方のベースには幾何学というギリシャの思想がありました。

 

本を読むだけではダメだ

最近、問いを持って本を読むようにしています。自らの問いがシャープでないと、その本をいくら読んでも、いくら覚えても何も得られないんですよね。

「(哲学書は、)本を読むだけではダメだ」ということがわかる一節を引用しましょう。

哲学書は何でもそうだけど、机に向かってうんうん唸りながら「読む」だけではだめだ、カントが扱っている問題自身を四六時中考えていることが必要なんだ。
最後にもう一度言っておくと、カント「について」哲学するのではなく、カント「とともに」哲学する、ということだね。わかるかな?
日ごろ、「なんで三角形が空間中に描けるんだろう?」とか「なんで原因が見つかるんだろう?」という疑問を抱いて「生きている」ことが大事だということだ。
だから、これはなかなか教えることはできない。ほとんど体質というものかもしれないからね。

引用:哲学塾授業 難解書物の読み解き方 pp.89-90

これはまさにそうで、僕は本ならなんでも読むのではなくて、読むのに適したタイミングがあると思っています。

つまり、「自分がちょうど普段から考えていることにあっている」瞬間に読むんですね。

そうでないと、「〜とともに」哲学することができず、「〜について」哲学することしかできない気がします。

たまたま読んだ記事「知的好奇心だけでは、教養豊かな人にはなれない?」でも、似たような話題がありました。

高い教養を身につけられた人は、単に知的好奇心が旺盛だったのではなく、人生の中で切実な問題に突き当たりさまざまなことを止むを得ず調べなければならなかった人、何もかも敵わないような圧倒的な先生に出会えた人なのではないか

引用:知的好奇心だけでは、教養豊かな人にはなれない? – 「教えて!教養の入り口」実行委員会

自分の人生で重要な問題にぶち当たって、そのためにありとあらゆる手段尽くす中で、(場合によっては)哲学につきあたるのでしょう。

 

僕が哲学につきあたるのかどうかはわかりませんが、ただ何かの元ネタについて調べるだけでなく、自らの問題として考えられるテーマを明確にしていきたいなと思いました。

そうでないと、本を読んでも得られるものがありませんからね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

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