ネット時代の著作権:クリエイティブ・コモンズは日本の二次創作界隈に普及するか?

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

クリエイティブ・コモンズという言葉を聞いたことがありますか?

簡単に言えば、現行の著作権法にのっとったまま、著作物をできるだけ自由に利用できるようにしたいというプロジェクト・NPOのことです。アメリカで2001年に組織が作られ、日本にまで広がっています。

「条件を守るなら許可なく利用していいですよ」と意思表示をするためのツールは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスと呼ばれています。

 

例えば、Wikipediaのテキストは、クレジットを表記して、同じくクリエイティブコモンズライセンスで公開するなら、自由に改変・商用利用もできます。画像共有サイト「flickr」では、クリエイティブ・コモンズで公開されている画像が多く、使いやすいです。

インターネットの時代、著作権をガチガチに利用して著作物を守るのではなく、条件付きで自由に使えるようにした方が、豊かな創作物が増えるんじゃないか、という考え方が背後にありますね

当サイト「文脈をつなぐ」のテキストも、クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利 ライセンスの下で利用できるようにしてみました。

 

今回は、ドミニク・チェン「オープン化する創造の時代 著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論」を読みました。

「クリエイティブ・コモンズ」仕組みと使い方を簡単に紹介した上で、日本で二次創作が活発になるために利用されていくかどうかについて考えていきたいと思います。

 

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「クリエイティブ・コモンズ」の仕組み

クリエイティブ・コモンズの大枠の仕組みは、簡単なものです。

通常の著作物は、Cマーク(All rights reserved)が表示され、二次利用されないことが前提となって公開されています。

一方で、著作権が消滅した著作物は、パブリックドメイン(PD)と呼ばれます。日本では、著作権は死後50年までが保護期間です。

青空文庫では、パブリックドメインとなった文章・小説が大量に公開されていますね。

で。Cはガッチガチで他人が利用できない、CからPDになるまでは50年かかるというわけです。

CとPDの中間で公開したい、二次利用しても良いという意思表示を簡単にするためのツールが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)です。

CCライセンスは、「Some rights reserved」を意図しています。すべての権利を主張するわけでもなく、すべての権利を放棄するわけではなく、その中間の権利を主張するということです。ここまではわかりやすいですよね。

 

じゃあその中間はどうやって表現されるか。これは、4つの表示を組み合わせて行われます。

  • 表示(Attribution,BY) 作品のクレジットを表示すること
  • 非営利(Noncommercial,NC) 営利目的での利用をしないこと
  • 改変禁止(No Derivative Works,ND) 元の作品を改変しないこと
  • 継承(Share Alike,SA) 元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること

「文脈をつなぐ」は、表示と非営利の組み合わせ、CC BY-NCライセンスで公開されています。

作品につけるライセンスは、「クリエイティブ・コモンズのライセンス選択エンジン」で簡単に作れます。ネット上の作品ならリンクを張れば良いですし、そうでなくても同様の文章を載せれば効力を発揮します。

 

CCライセンスは法律ではありません。パッケージ化された利用許諾です。

その利用許諾書には、日本の著作権法にもとづいた法的拘束力があります。つまり、書いてあることに反する使い方をされたら、ちゃんと著作権を行使できるわけです。

詳しくはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの「FAQ よくある質問と回答」に書かれてますね。

 

クリエイティブ・コモンズは日本の二次創作界隈に普及するか?

さて、僕がクリエイティブ・コモンズに興味を持ったのは、二次創作が盛んになってほしいからです。

著作権的にグレーなままヒソヒソとやるのはもったいない。権利者が二次創作を部分的に認めて、かつ自由に創作をしていけるジャンルが増えれば良いなと思ってます。

参考:「ネット文化・二次創作の面白さ」をポピュラーにしたい

 

では、クリエイティブ・コモンズは日本の二次創作界隈に普及するか、しているか?

僕の見解では、NOです。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを活用している例のほとんどは、海外の、それも大手のサービス・作品です。日本で、個人でやるにはやりにくい。

なぜ普及しないのか、理由を考えていきます。

 

「自由に利用できること」が強調されていない

まず、「自由に利用できること」がわかりにくいです。

CCというマークを見たとしても、それが著作物を自由に使っても良いですよと感じられない人が多いのではないでしょうか。逆に、何か条件を守らないと使えないのだという印象を与えます。

ライセンスのページに飛ぶと、何か固そうな文章が表示されます。初めての人は、「共有、翻案って具体的にはどういうことなの?」「ライセンスって何? 間違ったら権利侵害になるの?」と疑問に思い、使うのをためらってしまうでしょう。

「継承」はマジでわかりにくく、僕はその意味を知るのに数時間かかってしまいました。

 

例えば二次創作が盛んなジャンルである東方Projectでは、次のような形でガイドラインが示されています。

Q.東方シリーズのキャラや設定を使って、二次創作物を創りたいのですが

東方シリーズに登場するキャラクター、内容、台詞、音楽等の情報全ての
著作権は当サークルにあります。しかし、当作品は多くの同人創作者達に
支えられて成り立っています。(有難いことですm(__)m)

当サークルでは同人で慣例的な手段(ホームページ上で公開、即売会や同
人ショップの委託販売等)と内容(漫画、小説、ゲーム、CG、グッズ、
コスプレ等)であるならば、許諾、提出、報告等を行わなくとも自由に使
用して構わない事にしています。
なお、その創作物の著作権は二次創作作者のものになります。二次創作物
をめぐるトラブルが発生した場合も、当サークルでは一切責任を負いかね
ます。

引用:上海アリス幻樂団創作物の二次創作・使用関連ページ 

報告なしに使って良いですよ、ただし条件はあるよ」というのがわかりやすい。どんな手段なら良いか(ホームページ上で公開、即売会や同人ショップの委託販売等)なのか、どんな内容なら良いか(漫画、小説、ゲーム、CG、グッズ、コスプレ等)が具体的に示されています。

参考:東方Projectの二次創作ガイドラインまとめ・プレイ動画の許可は必要?

 

ライセンスは法的にガチガチであるが、どこまで守られるかはっきりしない

実際にこのサイトにCCライセンスを導入するときにも、面倒くささを感じました。

それは主に、CCライセンスが(法的拘束力を持つ)ライセンスだからです。

CCライセンスの一部を変更したり、免除したりすると、もはやCCライセンスと呼べなくなってしまうのです。

少し内容を変更したいなら、また別に書面が必要になってしまいます

「公序良俗に反する利用は禁止、他者の権利を侵害するのは禁止、成人向けは禁止」とか言えないんですよね。

僕は法律の専門家ではありませんし、利用許諾書は文字が詰まった文章なので、きちんと解釈できません。CCライセンスで公開したとき、自分が思った通りの保護が受けられるのか、判断しかねる部分があるのです。

16. 一度付けたCCライセンスを後から変更したい場合はどうしたらよいでしょうか?

CCライセンスは取消ができません。つまり、CCライセンスのついた作品を入手した誰かに対して、そのライセンスで認められている利用を止めることはできません。

CCライセンスをつけた作品の公表を止めることはいつでもできますが、既に出回ってしまった作品のコピーは、それが単なるコピーでも、編集著作物や二次的著作物に含まれるものであっても、それを回収するということはできません。

したがって、CCライセンスを選ぶときは、たとえ後になって作品の公表を中止することになったときでも、他の人がライセンスに従って作品を利用することにあなた自身が不満を覚えないようなものを選ぶように注意しなくてはいけません。

引用:FAQ よくある質問と回答 自分の作品にCCライセンスを付けてみようと考えている方へ

この文章は、「ライセンスは取り消しができない」と言っているんですよね。悪意ある利用のされ方をしても、永遠に回収できなくてもしょうがないかもよ、と読めてしまいます。CCライセンスで公開することがそんなに恐ろしいなら、誰も使わないでしょう。

法律の知識がなくても安心して著作権者が守られるなら利用したいと思う人は増えるでしょうが、どんなケースでどこまで守られるか素人にはわかりません。これだったら、とりあえず著作権は全部行使すことにしておこう、と判断するのも止むないことです。

 

独自のガイドラインを作るのが現実的?

実際、日本で二次創作を盛り上げているジャンルでは、CCライセンスをほぼ利用していないかと思います(うまくいってる例があったら教えてほしい)。

ユーザーが素材をアップし自由に利用できるニコニ・コモンズピアプロは、CCライセンスを参考にした独自のガイドライン・ライセンスを示しています。これは日本におけるCCライセンスの功績と言えるでしょう。素材配布サイト系は使えそうですね。

もっとも、フリー素材配布サイト「いらすとや」などはCCライセンスに全く関係なく、簡単な利用規約を公開しています。CCライセンスではクレジットの表示が必須となっていますが、いらすとやはクレジットなしで使えます。こういう対応ができないのがCCライセンスの不便な点です。

 

二次創作の盛んなジャンル、東方Project初音ミク・ボカロ艦これけものフレンズバーチャルYoutuberは、独自のガイドライン・ライセンスを作っています。

やはりガイドラインがないと、「二次利用してもいいですよ」「具体的にこんなのはアリですよ」というメッセージが伝わらないと思います。CCライセンス単体では伝わりません。

東方Projectは、ガイドラインを示すのみで、ライセンスは作っていません。だいたいの方向性は示しつつ、問題あるケースは著作者が判断できるようになっています。

これが個人作品で二次創作を推奨するなら、この形式が一番気楽ですね。法律の知識も必要ありません。こういうガイドラインが、CCライセンスのように標準化されるといろんな人が使いやすい気がします。

さらにちゃんと明示的に利用許可を出すのが、ガイドラインに合わせてライセンス(利用規約)を示すケースです。初音ミク・ボカロ、艦これ、けものフレンズ、バーチャルYoutuberなど、商業的にきっちりやりたい、変な二次利用で問題を起こして欲しくない、非公式グッズへの対応をちゃんとしたい場合はライセンスを出している印象です。

「ブラックジャックによろしく」という漫画は、商用含めて二次利用をフリーにしたことで有名になりました全巻無料で読めるアプリが作られています

こちらは、著作権に詳しい行政書士に利用規約(ライセンス)を作成してもらったそうです。きちんとしたライセンスを作るなら、法律の知識・専門家の手が必要になりそうです。

ここでもCCライセンスは使われていませんね。CCライセンスは、元が英語、専門知識が求められる部分があることから、賢い人でないと使えない印象が出てきてしまうのでしょう。

そんな便利なライセンスがあるのですが、あえて既存のライセンスを使用しなかったのは、僕が無知だったことと、単に著作権関連の文脈で語られたくなかったからです。
賢い作家がライセンスをスマートに使いこなしても、玄人好みの業界話に終わってしまいます。

引用:「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告 前編

 

後半はややネガティブな面を紹介しましたが、僕はクリエイティブ・コモンズの運動・考え方に賛成しています

著作物は、もっと自由に利用された方が、文化として盛り上がるはずです。ネットの時代に、デフォルトが全著作権の主張になっている現状はおかしい

CCライセンスそのものが普及しなかったとしても、クリエイティブ・コモンズはネット時代の著作権を考える動きのきっかけにはなっていると思いますから。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

この文章の一部画像は、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは」、creative commonsの「Understanding Free Cultural Works」を使っています。

 

新ブラックジャックによろしく1
佐藤漫画製作所/漫画onweb (2013-05-29)
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